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第88回 2009年12月17日
●執筆者紹介●
 
加藤泉
有隣堂 読書推進委員。
仕事をしていない時はほぼ本を読んでいる尼僧のような生活を送っている。

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〜読書推進委員が選んだ2009年ベスト1〜
 
【書名五十音順】
 

 
 
Another・表紙画像
Another

角川書店
1,995円
(5%税込)
   綾辻行人 『Another』 (角川書店)

地方の中学校に、ほんの少し遅れて転校した主人公の少年が、新しいクラスで起こる 「呪い」と囁かれる事件に巻き込まれ、その秘密を明かすべく「謎」に立ち向かう。
ずっと、著者の作品を読んできましたが、久しぶりにやられました。 600ページという厚みにひるみますが読みごごちは良く、普段は漫画しか読まないよ! という若い方に是非手にとって欲しい! と思いました。 ホラーとミステリを一緒に堪能できる1冊です。

(川崎BE店 小林あゆみ)

 
キャッチャ−・イン・ザ・トイレット!・表紙画像
キャッチャ−・イン・ザ・トイレット!

双葉社
1,365円
(5%税込)
   伊瀬勝良 『キャッチャ−・イン・ザ・トイレット!』 (双葉社)

超B級青春ど真ん中小説。 多少の下品な内容はご愛嬌ということで、お許しください。
平凡?な中学校生活を送る主人公黒沢が、いじめや恋愛等クラスメイトとの係わり合いを通じて、本当の勇気とは何かを見つけ、どん底から這い上がっていく物語。として読んでください。
結構せつなく、意外と面白いので、たまには肩の力を抜いて、こんな本を読んでみるのはいかがでしょう。

(横浜駅西口店 佐藤宏)

 
球体の蛇・表紙画像
球体の蛇

角川書店
1,680円
(5%税込)
   道尾秀介 『球体の蛇』 (角川書店)

幼馴染である「サヨ」の死の秘密を心に閉じ込めたまま生きる主人公「友彦」が、サヨによく似た「智子」と出会い、過ごした17歳の短い時を軸にして、きらめきと痛みに満ちた青春が一人称の回想で描かれている。 オルゴールのノスタルジックな旋律に、魂を揺さぶる「死と嘘」という不協和音がからみつくように物語は進む。 読み終えるとタイトルの“球体の蛇”という言葉を自分自身に投影し、そしてそれは読み手それぞれの形で意味をもつものだということを知る。 ホラー、ミステリーをしたためてきた著者が自身のブログの中で「本当に満足のいく小説が書けた」と言っているように新境地にして最高到達点である。

(宣伝担当 志村圭一郎)


恋の蛍・表紙画像
恋の蛍

光文社
1,890円
(5%税込)
   松本侑子 『恋の蛍』 (光文社)

有隣堂がこの世に誕生した1909年、一人の偉大な作家が誕生した。 太宰治である。 2009年は太宰生誕100周年ということで、ちょっとした太宰ブームが起こった。
しかしながら「人間失格」「斜陽」「桜桃」といった、太宰の代表作に多大な影響を与えた(と思われる)「最後の恋人 山崎富江」については「太宰の心中相手となった酒場の女」程度のイメージしか持っていなかった。 そんな読者も多いと思う。
本書は緻密な取材と確かな筆力でそんなイメージを覆す。 同時に、天才作家をただただ一途に、不器用に、純粋に、そして美しく愛し通した一人の女の性(さが)を描く。
太宰ファンのみならず、多くの方に山崎富江と本当の彼女を知って頂きたい。 6月13日の入水が、富江にとって最高の幸せだったことを祈りつつご紹介させて頂く。

(店売事業部 松信健太郎)


  この世界の片隅に 下・表紙画像
この世界の片隅に 下

双葉社
680円
(5%税込)
   こうの史代 『この世界の片隅に 下』 (双葉社)

2008年に上巻が発売になり、今年完結した全3巻のコミックです。 この下巻が、とにかく素晴らしいのです。
「愛」とか「希望」とか、口に出すのはいささか恥ずかしい言葉ですが、こうの史代さんの作品を読むと、どんなに過酷な状況の中でも人は愛や希望や笑いを持ち続けることができるのだ、と救われた気持ちになります。
この本を読んで、“この世界の片隅に”生きていることの幸せを、一人でも多くの方に味わっていただきたいです。
今年読んだ本の中で間違いなくベストワンですが、自分にとっては生涯のベストコミックになるかもしれません。

(アトレ恵比寿店 加藤泉)


再会・表紙画像
再会

新潮社
1,575円
(5%税込)
   重松清 『再会』 (新潮社)

期待を裏切らない重松清さん。 今作品もすばらしかったです。
6編の短編に収められており、巻頭の「いいものあげる」から「ロング・ロング・アゴー」まで一気に読むことができ、元気と共感、それに生きることの素晴らしさをいただきました。
ぜひ皆様に読んでいただきたい1冊です。

(販売促進室 加藤秀樹)

 
叙情と闘争・表紙画像
叙情と闘争

中央公論新社
1,890円
(5%税込)
   辻井喬 『叙情と闘争』 (中央公論新社)

1980年代、日本には西武セゾン文化とニューアカデミズムの台頭という熱き現象が確かにあったと思うのです。 当時の時代背景と機を一にした「文化思想」と「魅力的で賢い消費者像」を打ち立てた堤清二のこの回顧録は、当事者だったとは思えないほど冷静で丁寧、静かな響きをもって語られています。 三島由紀夫、安倍公房など、詩人辻井喬としての豊穣な文化的人脈も垣間見られ、読みごたえ充分です。
1983年に田中一光、小池一子、糸井重里、浅葉克己といった人々の知恵から生まれたセゾンという言葉は、四季(フォーシーズン)のフランス語なんだそうです。

(アトレ新浦安店 広沢友樹)

 
戦友の恋・表紙画像
戦友の恋

角川書店
1,575円
(5%税込)
   大島真寿美 『戦友の恋』 (角川書店)

「友達」というには互いのことを知りすぎていて、「親友」といった麗しい関係でもない。 時には恋人よりも頼りになって、時には触れてほしくない傷を笑い飛ばしてくれる。 そんな「戦友」が誰しもいるのではないかと思う。 人生を共有してきた戦友・玖美子を失った佐紀が、玖美子を思い出にできるまでを綴ったこの物語。 でも、佐紀の中には玖美子がいて、たまにふと思い出して笑うんだろうなと思うと、戦友って最高の関係だと思った。

(ルミネ横浜店 富澤明子)

 
追想五断章・表紙画像
追想五断章

集英社
1,365円
(5%税込)
   米澤穂信 『追想五断章』 (集英社)

私が今イチ押しの米澤穂信さん。 これまでは青春&学園ミステリが主でしたが「今回は青春去りし後」を描いています。
「亡くなった父の小説を探してほしい。 」と依頼され、結末が書かれていない5つの小説を探す主人公。
なぜ、最後の一行は書かれなかったのか? そして22年前の未解決事件「アントワープの銃声」とは? 物語を進むにつれて謎は深まり、面白さも増していきます。
彼らが手にした真実は眠らせたままの方が良かったのかもしれない…と思わせるような苦く悲しいもの。 でも読後感は決して悪くはないですし、ミステリファンも納得!の読みごたえのある1冊だと思います。

(厚木店 岩堀華江)

 
身の上話・表紙画像
身の上話

光文社
1,680円
(5%税込)
   佐藤正午 『身の上話』 (光文社)

とにかく語り口の素晴らしさに脱帽。 面白い、恐い、だけど続きが早く読みたいという、小説を読む楽しさや喜びを満喫させてくれます。
小説の良き書き手であると同時に良き読み手である作者の、書き方の方法論を遺憾なく発揮した、今年の大きな収穫です。
作者は、森鴎外の「雁」を論じた評論で、「雁」は「ほんの些細なことで人の運命が変わってしまう」というテーマを扱った、書き方の練習問題だと言っていますが、まさにその実践の見事な成果です。 「雁」では、献立にサバの味噌煮が出た事が、「身の上話」では、宝くじを買った事が。

(店売事業部 中村努)
   

  文・有隣堂 読書推進委員

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