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朱野帰子 『マタタビ潔子の猫魂』(メディアファクトリー)
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悠木: |
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それでは1人1作品推薦していくことにいたしましょう。 まず最初に野口から。 |
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野口: |
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はい。 私は第4回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞作の『マタタビ潔子の猫魂(ねこだま)』をおすすめします。 漫画家の東村アキコさんの装丁が目を引く1冊です。 |
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平尾: |
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どういう内容なんだ?
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野口: |
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主人公は、地味で無口な派遣社員の潔子です。 溜めに溜め込んだ彼女のストレスが頂点に達した時、飼い猫の魂が潔子に憑依して復讐を果たしていくというお話です。 あ、短編集です。 |
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平尾: |
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怖いなあ。 「うしろの百太郎」か? |
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悠木: |
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私も読みましたがそれほどおどろおどろしい感じではないです。 イメージとしては藤子不二雄Aの『笑ゥせぇるすまん』に近いですかね。 しゃばけシリーズとか好きな人にもおすすめかも。 |
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野口: |
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とにかく胸がスカッとするエンタメです。 猫好き1人暮らし独身女性の方には特におすすめします。 |
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平尾: |
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へえ。 私も読みたくなってきたぞ。 |
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野口: |
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あと、著者・朱野帰子さんのコメントが揮っています。 「怒るほどではないけれど決して許せぬ人がいる。 恨みに取り憑かれた貴方に、この本を捧げます。 」だって。 いいでしょう〜。 |
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平尾: |
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やっぱり読むの怖くなってきた! |
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朝井リョウ 『桐島、部活やめるってよ』(集英社)
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野口: |
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最後は平尾さんからのおすすめです。 |
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平尾: |
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私のおすすめは、第22回小説すばる新人賞受賞の『桐島、部活やめるってよ』。 んも〜、これほんとに最っ高! ! |
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悠木: |
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やけに興奮してますね。
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平尾: |
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いや、これ、マジすげえよ! って、私まで高校生みたいな話し方になってしまうほど素晴らしい青春小説だ。 |
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悠木: |
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タイトルから察するに、桐島くんという子が部活を辞めるお話なんですか? |
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平尾: |
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キャプテンの桐島がバレーボール部を辞めるってとこから始まるんだけどな、バレーボール部だけの話ではなくて、野球部、ブラスバンド部、女子ソフトボール部、映画部に所属している5人の高校生を主人公にした連作短編集なんだ。 |
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野口: |
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実は私も読んだのですが、すばらしかったですよ! 特に映画部に所属するイケてない男の子を主人公にした章がすごく身にしみました! 私も体育の時間は気配を消していましたもん。 中学生や高校生の頃って、クラスがグループ分けされてて、「上」のグループと「下」のグループみたいに階級っぽくなってたじゃないですか。 そういう空気がすごくよく伝わってきました。 |
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平尾: |
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そうだな。 “イケてない青春小説の名手”豊島ミホの作風によく似ているかもな。 |
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悠木: |
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豊島ミホですか! それは読まなくては。 |
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平尾: |
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なんだよ〜、お前、ひょっとして豊島のこと好きなんじゃん? |
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野口: |
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その、エセ高校生みたいな話し方、いい加減やめてください。
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