※2014/2/28以前の「本の泉」は、5%税込の商品価格を表示しています。 |
第5回 2006年7月13日 |
|
暑い夏こそ熱い本を! | |||||||||
梅雨明けが待ち遠しい今日この頃。 梅雨が明ければ本格的な夏到来! でも暑いからといってガリガリ君ばかり食べていると夏バテ必至なので(去年の教訓)、今年は身も心もしっかりと汗をかこうと心に決めている。 というわけで今回は、読んでいるだけで熱くなる本を皆様にもご紹介。 |
||||||||||
まず初めに、高野秀行『アジア新聞屋台村』。
著者は、早稲田大学探検部在籍中に『幻獣ムベンベを追え』でデビューし、以来、旅行記を中心に書いている"辺境冒険作家"。 モットーは、「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、誰も知らないものを探す。 そして、それをおもしろおかしく書く。」 本書は、ひょんなことから彼が編集顧問を務めることになった「エイジアン」という会社の紆余曲折を描いたノンフィクションだ。 「エイジアン」はタイ、台湾、ミャンマー、インドネシア、マレーシアの5つの国の新聞を発行しているミニコミ出版社。 各新聞にはそれぞれ現地出身の担当者が就いているが、創立以来編集会議というものをしたことがなく、いわば個人の手作り新聞(しかも誤植だらけ)を、商業ベースで何万部も発行しているような会社。 自分たちがおやつに食べているクッキーやメロンパンを、初対面の来客に「どうぞ」と差し出すような、そんな社風だ。 この会社を象徴しているのが台湾出身の女社長・劉さん(31歳)。 「会社のために頑張るという社員は嫌い。 自分のために頑張るという社員が好き。 だって、そういう人のほうがおもしろいから」「確実に儲かる仕事はおもしろくない」などの名言を吐く彼女は、新しいことにチャレンジするのが生き甲斐で、自分の信じたことをとことんやり抜くバイタリティの持ち主。 この女性が本当に魅力的で、こういう人の存在を知ることができるだけでも本書を読む価値がある。 日本にいながらにしてモンスーン気候の、もわっとした熱気が感じられる1冊。 次に、小路幸也『東京バンドワゴン』。 タイトルの「東京バンドワゴン」とは、本書の舞台である古書店の屋号。 ここに暮らす4世代8人家族の賑やかなこと! 店主で79歳の勘一、その息子で元ロックンローラーの我南人(がなと)60歳、その子供たち紺・藍子・青、紺と嫁の亜美の間にできた小学4年生の研人、藍子が未婚のまま生んだ小学6年生の花陽。 朝食の風景を読んでいるだけで熱い熱い。 この一家の周りで巻き起こる珍事件が春夏秋冬の各章で描かれているのだが、事件が解決される時に必ずホロリとさせられるので、「男はつらいよ」的な人情ものが好きな方には迷うことなくオススメする。 読後は、「やっぱりLOVEだねぇ」と熱い涙を流すこと請け合い。 ちなみに本書を、昔のテレビドラマ『寺内貫太郎一家』にたとえる方が多い。 久世光彦演出のホームドラマ(『ムー』『ムー一族』含む)がお好きだった方は必読! 最後にクールダウンの1冊、大島真寿美『ほどけるとける』を。 主人公は、高校を中退して祖父の営む銭湯で働き始めた美和。 「何もやりたいことがない」彼女が、常連客と交流を深めていくうちにささやかながら夢を持っていく過程が描かれている。 その姿に、勇気付けられるというよりも癒される、不思議な味わいの小説だ。 読んでいると、タイトル通り、固くなった心がゆるゆるとほどかれていくような感じになる。 夏バテになる前に、この本で心のマッサージを! 文・読書推進委員 加藤泉 構成・宣伝課 矢島真理子 |
|
|
前の回へ |