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第28回 2007年6月21日 |
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2007年上半期ベスト1 | ||||||||
月日の経つのは早いもので、今年も折り返し地点にさしかかろうとしています。 今回の「本の泉」では、「2007年上半期ベスト1」と題して、有隣堂スタッフ有志に、今年の上半期(2006年12月〜2007年5月発行のもの)に読んだ小説の中から最も心に残った作品を挙げてもらいました。 皆様、読み逃した本はないでしょうか? どうぞご参考になさってください。 |
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(書名五十音順) | ||||||||||
赤朽葉家の伝説 東京創元社・1,785円 (5%税込) |
『赤朽葉家の伝説』 桜庭一樹:著 小説を読む愉悦を久々に教えてくれた1冊。 今、一番ノリにのっている作家はこの人でしょう! シゲラーの鼻息が荒い今日この頃ですが、今年は輝ける桜庭一樹YEARになると思います! (藤沢店 加藤泉) |
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悪人 朝日新聞社・1,890円 (5%税込) |
『悪人』 吉田修一:著 読み終えて、うーんって唸りました。 これはすごい小説に出会ったなって思いですね。 まあ、言ってしまえば、今流行りの出会い系サイトで知り合った男が女を殺してしまうってストーリーなんですが、奥が深い、深すぎる。 ドストエフスキーや親鸞を持ち出しても議論出来るレヴェルの小説かもしれませんよ。 ちょっと、言いすぎかな。 人物を描く作者の視点が多面的なのにブレがないし、描写のディテールにこれほどのリアリティーがある小説も珍しいですね。 作者の、人間を見る確かな眼と巧みな小説技法が融合して、「見事」としか言えませんね。 (書籍外商部 中村努) |
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おいしいコーヒーのいれ方 Second Season1 蜂蜜色の瞳 集英社・780円 (5%税込) |
『おいしいコーヒーのいれ方 Second Season1 蜂蜜色の瞳』 村山由佳:著 「そろそろかな?」と胸を躍らせて待っていた5月、待ち望んでいた村山由佳さんの新作です。 しかも、一回完結した『おいしいコーヒーのいれ方』シリーズがSecond Seasonとなって帰ってきました! やっぱり勝利君とかれんさんの恋愛模様からは目が離せません! 恋愛に大事なことは、相手を大切に思いやること。 そして、相手を<信頼すること>。 二人の恋を、おいしいコーヒーをお供に一緒に見守ってみませんか? (ルミネ横浜店 佐藤紀子) |
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カシオペアの丘で 上 同 下 講談社 各1,575円 (5%税込) |
『カシオペアの丘で 上・下』 重松清:著 上半期のベストですか…。 もうそんな時期なんですね、早いものです。 さて、私が選ぶ上半期のベスト1は、重松清さんの、「カシオペアの丘で」とさせていただきました。 読んだ瞬間、「これは今年のNo.1だ!」と思いました。 ミステリーでもないのに、先が気になり、読むことが止められなかった…。 うぅ、今思い出すだけで、胸が詰まってきました。 気合入れてPOPとパネルまで、作ってしまいました。 (厚木店 岩堀華江)
重松清さんの最新刊「カシオペアの丘で」良かったです。 重松作品NO.1だと思います。 人が亡くなるお話にもかかわらず読後感が悲しいだけではなくさわやか感も充分あるのはさすが。 また家族を残して逝ってしまわなければならない人の悲しみや家族に対する深い愛情も痛いほど伝わってきます。 柄にもなく、生きる事に一生懸命でなくてはいけないと痛感しました。 多くは語りません。 重松作品初心者にこそ、是非是非読んで頂きたい作品。 (ランドマークプラザ店 大嶋慶子)
やられました! 自称「シゲラー」の私は、「もうそんなたやすいネタでは、泣かないぜ。」と涙腺をしっかりロックして読んだつもりが、まるで涙のジェットコースター。 「重松、アンタ、またやっちまったかい。」と鼻息も荒くなりました。 なんたって、泣かせのてんこ盛りです。 カシオペア座の刺繍が入ったハンカチでも付録につけろよ、気がきかないなあ。 でも、上半期No.1の座は、重松、やはりアンタの小説「カシオペアの丘で」に決定だ! (厚木店 佐伯敦子) |
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カラスのジョンソン 講談社 1,680円 (5%税込) |
『カラスのジョンソン』 明川哲也:著 人間から忌み嫌われている存在のカラスと、過ちを犯したために追いやられた人間の物語です。 まずシンプルだけど、強く美しい文章にやられてしまいました。 またこの物語ではいろいろな愛が描かれています。 母性愛、親子愛、種族を超えた愛、そして何より作者の明川さんの彼らに対する愛。 残酷な運命に翻弄され、挫けそうになりながら懸命に生きていく彼らの姿に胸が熱くなりました。 最後は思わず嗚咽が止まらなくなるほど熱くなってしまいました。 お子さんに…いやお子さんだけに読ませるには勿体無いほど愛が溢れる物語をこの機会に是非ご一読をお願いします! (小田原ラスカ店 佐藤真)
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鹿男あをによし 幻冬舎・1,575円 (5%税込) |
『鹿男あをによし』 万城目学:著 やっぱ、万城目学の『鹿男あをによし』でしょう。 発売前に広告用のパネルが届いて、それに自筆で「カモンマイシカ!」って書いてあったんです。 すごく気に入って、すぐ大量に追加しちゃいました。 実は、前作の『鴨川ホルモー』がウチの店の売れ行きがイマイチだったので、どうかなぁと思っていたんだけど、マイシカパネルの効果は絶大でしたね。 その後は『鴨川ホルモー』も売れ出して、いまだに毎週どちらか注文してます。 (アトレ恵比寿店 内山直子)
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小学五年生 文藝春秋・1,470円 (5%税込) |
『小学五年生』 重松清:著 大人に成った今では難無くこなせる生活と人生の障害が、命懸けで体当たりしないとクリア出来なかったあの頃。 己が記憶も鮮明に甦り、涙腺決壊必須の短編集。 死ぬ迄こういう、あの頃の様に色眼鏡無しで世界を見られた、たましいを持ち続けて居たい。 たとえ現実の厳しさを知ってしまっていたとしても。 (ルミネ横浜店 佐々木章子) |
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千年樹 集英社 1,680円 (5%税込) |
『千年樹』 荻原浩:著 面白かったなあ。 何が面白いって、千年の視点で物語が語られているところ。 恋人を待つ女性、空襲から逃げまどう少年、切腹する武士。 同じクスの樹の回りで起きたという事以外は生きた時代も環境も何もかも違う人々のドラマが全部一緒くたに語られてしまうところ! 樹齢千年の巨大なクスの樹から見れば、人間は虫のように儚く小さな存在なのかもしれないと思いましたよ。 (東戸塚店 柏村靖子)
いつの時代の人間も、現代人と同じようなことで悩み、苦しんでいるんだなぁと感じました。 1000年にわたる時間の中で、多くの人間たちの生と死を描いた渾身の力作だと思います。 各編は「過去」と「現在」を並行して描いています。 まったく時代が異なるエピソードが、人間たちの思いが、千年樹を介して交錯していきます。 千年という時間の重みを印象付ける、切ない幕切れが待っています。 (書籍外商部 矢部久美子) |
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電車屋赤城 角川書店 1,890円 (5%税込) |
『電車屋赤城』 山田深夜:著 くたびれたおじさんにも希望をなくした青年にも元気が出てくるよう物語『電車屋赤城』を大プッシュでーす。 電車男のようにうだうだ言う子供ではなく実直に一歩一歩足を前に踏み出そうとする大人の職人とその背中に学び、成長していく青年たち。 仕事へのそして人としての尊厳と愛と誇りをこれでもかというほど見せつけられます。 特に著者が某○急で20年電車整備に携っていただけあり職人気質炸裂のシーンは迫力満点 こんな人になりたかった』、『こんなやついたな』と働くすべての労働者の共感間違いなし。 今年上半期の1押しはこれでしょう。 (戸塚モディ店 安田信之)
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【新釈】走れメロス (他四編) 祥伝社 1,470円 (5%税込) |
『【新釈】走れメロス
(他四編)』 森見登美彦:著 私の心の中の2006年本屋大賞だった森見登美彦の最新刊『走れメロス』。 5つの名作短編を新釈したもので、「夜は短し歩けよ乙女」に引き続き今回もお腹をかかえて笑いながら読みました。 なかでも「走れメロス」の学生たちの阿呆なやりとりが、くだらなすぎて大スキです!! 太宰治を読んでなくても十分楽しめます。 ところで、皆さんはたった一人の友のために「美しく青きドナウ」の曲に合わせ、ピンクのブリーフ一丁でステージの上で踊ることが出来ますか?私にはどう考えても無理です…。 (藤沢店 菅野貴子)
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湖の南 新潮社 1,680円 (5%税込) |
『湖の南』 富岡多恵子:著 中学生の頃社会科で「ロシアのロマノフ皇太子暗殺未遂事件」って習いましたでしょ。 実は、この小説はその犯人の津田三蔵の人生がモチーフなんですね。 一介の巡査(警察官ではなく巡査ね)が、大国ロシアの皇太子を刃傷沙汰に及ぶというのがどういうことか、別に疑問も持たず、テストにも出ないのは明白だからやり過ごしていたけれど、この小説を読んではじめて、ここに至る経緯の奥深さを知ったのヨ。 彼は思想的なことが誘引でサーベル(中味はぼろくそな日本刀)を振り上げたのではなかったというのね。 これは、大人じゃないと理解できないと思ったわね。 ああ、それから只のノンフィクションにあらず。 唐突な場面展開が随所にあるし、富岡多恵子だからねえ。 (営業推進室 池田洋子)
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八日目の蝉 中央公論新社 1,680円 (5%税込) |
『八日目の蝉』 角田光代:著 迷いました、『フィッシュストーリー』と。 角田さんにしては珍しく、彼女の文章のもつ独特な「疲労感」がなく、妙にドキドキ。 とんでもない女の話、なんですが、思いきり感情移入して読んじゃいました。 うまいっ! そして女はつよい。 だから涙出ちゃうんです。 ところでエンジェルホームは、今はやりのロハスの極地かも、など余計なことも考えました。 (川崎BE店 小宮久美)
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夜は一緒に散歩しよ メディアファクトリー 1,260円 (5%税込) |
『夜は一緒に散歩しよ』 黒史郎、ダ・ヴィンチ編集部:著 日常と非日常の隔たりってどこにあるんでしょう? 生と死の境目ってただ単純に生体活動の有無だけ? 死んでしまった人間の思念は一体どこへ? それは、僕たちの世界と極めて近い場所にとどまるのだとすれば。 それが視えてしまったら。 例えば、青い女の顔だったら。 それをひたすら描き続ける女の子に出会ったら。 怪談は好きで、苦手な人を泣かせるくらいには得意ですが これは久々に夢に、白昼に、視てしまいました。 あなたの肩に顎を乗せていますよ? (ルミネ横浜店 羽生斉彬)
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LittleDJ (小さな恋の物語) ポプラ社 1,260円 (5%税込) |
『LittleDJ (小さな恋の物語)』 鬼塚忠:著 なんといってもNo.1は「Little DJ」。 万年補欠の野球少年太郎が白血病で入院したことをきっかけに自分のいちばんやりたいこと=DJをみつけ、色々な人と出会い、強くなっていく物語。 最後の放送でいちばん大切な人に思いを伝えるシーンはまさに号泣。 いちばん大事なものはなにか、勇気とはなにかを教えてくれます。 みんなで太郎を応援しませんか? (アトレ目黒店 佐藤宏)
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6時間後に君は死ぬ 講談社 1,680円 (5%税込) |
『6時間後に君は死ぬ』 高野和明:著 ここ半年ってことで、悩みましたが、私は「6時間後に君は死ぬ」ですね。 高野和明さん、こんな感じの小説も書くんだぁってちょっとビックリしましたし、なにより面白かった!最後まで読んでいくと、悪い未来を避けようとするだけじゃなくて、約束された良い未来までも変える話で、自分の生き方とか、幸せって何かを問われてる気がして、後々まで印象に残りました。 ついついPOPも書いちゃって、応援してます(笑) (ヨドバシAKIBA店 坂本実幸)
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文・読書推進委員 加藤泉
構成・宣伝課 矢島真理子 |
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