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第37回 2007年11月1日 |
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〜島本理生特集〜 |
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今月刊行される新刊『クローバー』で新しい魅力を開花させた島本理生さん。 今回の「本の泉」では、有隣堂島本理生クラブ(非公認)の声をお届けいたします。 島本作品のマイベスト1を各メンバーが選び、熱く語ります。 それでは刊行順にご紹介してまいりましょう。 |
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『生まれる森』 女の持つ親密な闇をうまく書ける人だなとぼんやり思いながら読みました。 この"ぼんやり"というのがちょうど良くて、私はスラっと読んでしまったのですが、男の人が島本作品を読むとますます女性が怖く、気味悪く思うのかもしれません。 濃密過ぎた人間関係を処理し、ひきずられなくなるようになるまで。 とてもしんどい日々を諦めず、過ごす主人公が新たな道を歩き出していく様に私も活力をもらいました。 (ルミネ横浜店 富澤明子)
物語としての起伏は薄く、さまようだけの女の子を描いたものですが、だからこそ響くものがあるのかもしれません。 散文的にちらかった想い。 まとまりきらないぞんざいな物語。 緻密なプロットも、驚天動地のどんでん返しもありませんが、作者がこらえきれず吐き出した、小説らしい小説とはこういうものなのかな、と少しだけ思ったり。 一抹の寂しさと暖かさが胸に残る不思議なお話です。 (ルミネ横浜店 羽生斉彬)
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生まれる森 講談社 1,365円 (5%税込) 生まれる森 (講談社文庫) 講談社 440円 (5%税込) |
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『ナラタージュ』 時折、「人を好きになる」という感覚を忘れてしまって、何となく無理に理由をこじつけている自分を見つけることがあります。 恋愛小説はあまり読まなくなりましたが、ごくたまにキラキラ光る宝石のような作品に出会うと心が弾みます。 島本理生さんの『ナラタ−ジュ』は、そんな一冊でした。 あの瞬間…そう島本理生さんが紡いでくれたあの一節。 「たぶん最初にすれ違った時から、私は葉山先生が大好きだった」 私は、いつもこの本を読み返す時、大切な人との大切な出会いの瞬間を鮮明に思い出そうとしてみます。 この本は私にとっていつまでも今まで読んだ恋愛小説の中で一番切なくて、素敵でそして大好きな一冊であり続けると思います。 (ヨドバシAKIBA店 佐伯敦子)
かなり恥ずかしいけれども思い切って言ってしまう。 こんな風に胸の奥がキュッと痛くなる様な恋がしたい。 恋愛はたとえうまくいってもいかなくてもエネルギーが必要でそして一生懸命でなくてはいけない、とこの年になって改めて悟ってしまった。 それにしても人の気持ちが少しずつ変わっていく微妙な描写が絶妙に上手な作家だ。 わけもなく物悲しい秋にじっくり読み涙したい方におすすめしたい恋愛小説が『ナラタージュ』である。 (藤沢店 大嶋慶子)
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ナラタージュ 角川書店 1,470円 (5%税込) |
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『一千一秒の日々』 島本理生さんの代表作と言えば『ナラタージュ』ですが、正統派の恋愛小説はちょっと…という方には『一千一秒の日々』をおすすめします。 えっ、これほんとに島本理生?! と驚くほど、軽いタッチの連作短編集です。 「ぐへへ」と笑う女子が島本作品に登場するなんて…。 面白おかしくて、せつなくて、温かい気持ちになれる1冊です。 (アトレ恵比寿店 加藤泉) |
一千一秒の日々 マガジンハウス 1,365円 (5%税込) |
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『大きな熊が来る前に、おやすみ。』 島本理生初の3作からなる短編集で、それぞれ心に深い傷を負った影のある女性たちが主人公の恋愛小説です。 印象的なのは2作目の「クロコダイルの午睡」。 新しいことになかなか踏み込めずに坦々とした日々を過ごしていた主人公の女性が、一緒にごはんを食べるうちに最初は苦手なタイプだった男性のことを次第にどうしようもなく好きになっていく。 しかし彼には彼女がいて…とよくある話ですが、恋に不器用すぎて空回りする女性が彼に対して最後にとった行動の後の一言が、意外でぞっとするほど怖かったです。 「そりゃそうだろう!」と誰もが突っ込みたくなるラストでした。 酒井駒子さんの装画がとても素敵な1冊です。 (厚木店 菅野貴子)
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大きな熊が来る前に、おやすみ。 新潮社 1,365円 (5%税込) |
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『あなたの呼吸が止まるまで』 舞踏家の父と二人暮らしの12歳の少女「朔」を主人公とする一人称小説。 小学校生活や父の仕事仲間との交流の中で、孤独で感受性の強い少女の内面が静かに丁寧に描かれ、これはヤングアダルト文学の傑作か、と思いきや、中盤から大人の怖い小説に変貌する。 「です、ます」調の文体を含め、小説のとしての構成力と表現力は『ナラタージュ』を超える出来だ。 残酷で悲しく怖い。 島本理生は、着実に力をつけてきている若手作家の一人だ。 (販売促進室 中村努)
裏切りと背徳と卑怯さに唾棄を催しても、 暗い井戸に映る月星と紛う静謐な文章は、 五体に染み渡る読経の如し。 (ルミネ横浜店 佐々木章子)
子どもであるがゆえにもつ危うさ、残酷さ、将来の夢という希望、淋しさ、そして暴力に対して抗うことが出来ない無力感。 ページを繰るごとにそれらが切々に伝わってくる。 また、今までの彼女の姿を見てきたからこそ、最後の強い言葉に、私は驚いた。 「私はあなたを逃がさない。 絶対にあなたを許さないから」 (ルミネ横浜店 佐藤紀子)
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あなたの呼吸が 止まるまで 新潮社 1,575円 (5%税込) |
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文・読書推進委員 加藤泉
構成・宣伝担当 矢島真理子 |
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