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第71回 2009年4月9日 |
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我が心の第六回本屋大賞 | |||||||
4月6日、第六回本屋大賞が発表になりました! 大賞受賞作は湊かなえ『告白』(双葉社)です。 今年も去年同様、有隣堂スタッフ有志に “本屋大賞は『告白』だったけど、私にとっての第六回本屋大賞はこの作品!” を選び、熱く語ってもらいました。 本屋大賞ノミネート作ばかりでなく、この中の本も是非お読みになってください。 |
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(書名五十音順) |
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庵堂三兄弟の聖職 1,575円 (5%税込) |
真藤順丈 『庵堂三兄弟の聖職』 (角川書店) 『地図男』の「ダ・ヴィンチ文学賞」受賞を皮切りに、4つの新人賞を受賞するという鮮烈なデビューを飾った真藤順丈氏。 その中でも、「日本ホラー小説大賞」を受賞した『庵堂三兄弟の聖職』は、「ホラー小説」というカテゴリーに属していながら、その実は「人間味」に満ち溢れた物語で、何と言っても、庵堂三兄弟の絆が熱い!! クライマックスは感動を抑えることが出来ません。 これは本当にホラーなのだろうか?そんな疑問は、この話の面白さの前ではほんの些細なことに過ぎないのです。 読まず嫌いはいけません。 一度読んだらもう、真藤順丈の虜となること間違いなし!! (横浜駅西口店 佐藤正博) |
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風花 1,470円 (5%税込) |
川上弘美 『風花』 (集英社) 丁寧という言葉が好きです。 エキセントリックなことは人生に必要だし、思い出も残りやすいものです。 でも多くの時間は普段の生活の中にあります。 その期間の長さが醸造することで、味わい深いものが生まれてくるんじゃないのかなあ…。 そんな雰囲気が生まれ始めた結婚7年目ののゆりに、夫が部下の女性と付き合っているという事実が、ゆっくり静かに浸透していきます。 途方に暮れるという言葉がしっくりくる、のゆりの心の揺れ動きをここまで丁寧に描ける川上弘美さんがとても好きです。 川上さんは俳句も嗜むようです。 「はっきりしない人ね茄子投げるわよ」は傑作だと思います。 (横浜駅西口店 広沢友樹) |
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船に乗れ! 1 合奏と協奏 1,680円 (5%税込) |
藤谷治 『船に乗れ! 1 合奏と協奏』 (ジャイブ) チェロなど弾いたことはないしどんな楽器かもよくわからないしもちろん音を聞きわけられるはずもなく…。 そんな私が音楽学校でチェリストを目指す高校生の男の子に感動してしまった。 その文章や行間からは彼の指使いが見えるようであり奏でるメロディが聴こえてくるようだった。 汗水たらして頑張るスポーツものとは違うけどまさしく爽やかな青春小説である。 クラシック音楽がよくわからなくても十二分に楽しめて先が気になる作品。 そして柄にもなく今は家で埃をかぶってしまっているピアノを弾いてみようかしらなんて思ってしまったのである。 (川崎BE店 大嶋慶子) わたしの心の中の本屋大賞2009は、胸きゅん必至の青春音楽小説です!! 人前で演奏することの、あの何とも言えない緊張感と感動、仲間と1つの音楽を作りあげていくことの楽しさが、たとえ楽器演奏の経験がなくともガンガン伝わってきます。 「打ち込める何かがあること、気の合う仲間がいて憧れの子に恋をすることっていいな!! はぁ〜、学生時代に戻りたいな〜」って思います。 青春小説なんて…と思わずに是非読んでみて下さい。 (藤沢店 菅野貴子) |
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ヘルマフロディテの体温 1,575円 (5%税込) |
小島てるみ 『ヘルマフロディテの体温』 (ランダムハウス講談社) 舞台はナポリ。 女装趣味のある大学生シルビオが、ヘルマフロディテ(真性半陰陽・両性具有)の大学教授Z(ゼータ)に導かれながら、自分探しの旅をする物語だ。 5章に分かれた構成も破綻がなく、シルビオの現実と彼が紡ぎ出す物語が交錯し補完しあって、小説全体を濃密なものにしている。 人間を男と女の二分法で分けることに対する異議申し立てと、その狭間で苦しむ人たちへの応援歌ともなっていて、質の高い物語空間を創りだしている。 完成度の高い小説だ。 (店舗事業本部 中村努) |
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茗荷谷の猫 1,470円 (5%税込) |
木内昇 『茗荷谷の猫』 (平凡社) 幕末の江戸から戦後の東京までのおよそ百年、この地に生きた市井の人々の物語です。 だから何、と言われればそれまでだけど、胸に残って忘れ難いもの、風景だとか言葉ってありますよね。 そんな余韻の九つの物語。 泣き笑いに似た感情、という表現が近いでしょうか。 読み進むにつれ先の話に深みが増す趣向、繊細で的を得た表現、同じ地に住む者として、自分の先祖にも思いを馳せる、大切にしたい一冊です。 (アトレ目黒店 倉田裕子)
なんて素晴らしい! どうして去年のうちに読まなかったんだろうと大いに後悔した1冊。 江戸〜明治大正〜昭和〜戦中戦後の東京(今で言う山の手線周辺)を舞台に、そこで暮らす市井の人々の歴史を描いた短編集です。 とにかく、文体がいい。 なんだか懐かしい文章だなあと思っていたら、中盤の章でこの作家は漱石・百閒の流れを汲む人だと分かって合点がいきました。 「隠れる」という章が爆笑もので、この短編だけでも皆さんに読んでいただきたいです。 思い通りにいかない人生を滑稽に描いた名作です、これは。 (アトレ恵比寿店 加藤泉) |
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もう誘拐なんてしない 1,260円 (5%税込) |
東川篤哉 『もう誘拐なんてしない』 (文藝春秋) 舞台は山口県下関。 どこにでもいそうなちょっとやる気のない大学生がある事情からヤクザの組長の娘と知りながら「俺がおまえを誘拐してやろうか」と自分から言って狂言誘拐を実行しますが…。 内容がシリアスになってもおかしくない要素を持っているにもかかわらず、キャラクターやポンポンと交わされるコミカルな会話がシリアスにさせないで、最初から最後までおもしろく読みやすい本です。 (横浜駅西口店 井上尚美) |
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幽談 1,449円 (5%税込) |
京極夏彦 『幽談』 (メディアファクトリー) 京極夏彦独特の、お腹の底からゾクゾクする感じと、先の見えないドキドキ感が、何とも言えません。 シリーズになっているものは、ページ数が多くて、初めての人はそれだけで嫌になっちゃうけど、これなら短編ですし、まずは試しにどうでしょう? 一度読んだら、やみつきになること間違いないし! 京極ワールドに、ハマってみませんか? (横浜駅西口店 橋本千明) |
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夜の光 1,680円 (5%税込) |
坂木司 『夜の光』 (新潮社) 今回の坂木司は一味も二味も違います。 本当の自分を隠し周囲の人々と密かに戦う“スパイ”であるということで深く繋がっている彼(女)たち。 夜空を見上げ共に戦っている仲間を想う、それだけで強くなれる。 そしてまた戦い続ける。 そんな4人の強くひたむきな姿に心が揺さぶられます。 より多くの人に彼(女)らの戦い、想いを感じて欲しいです。 (厚木店 岩堀華江) |
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流星の絆 1,785円 (5%税込) |
東野圭吾 『流星の絆』 (講談社) 『悼む人』『利休にたずねよ』『新世界より』『シズコさん』『夏のくじら』『Box!』…昨年は、たくさんの良書に恵まれた一年でした。 が、やはり私の“本屋大賞”は、東野圭吾の『流星の絆』に決まり!発売されるのを、指折り数えて待ち、出たら即買い即読みは当たり前、寝不足なんて気にせず仕事に向かい、さらにテレビ化されれば、速攻帰り、「嵐と関ジャニか!」と思いつつも毎週かかさず見続けました。 ストーリー構成抜群の東野圭吾の昨年一番のエンターテイメントミステリーを本屋大賞にしないのは? 書店業界の方向性に疑問があるところですが、思わず「そうだ! 雨! 傘!」と最終回で再びハッとした、ともかく楽しめる作品です。 (ルミネ横浜店 佐伯敦子) |
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