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第86回 2009年11月19日


●執筆者紹介●


加藤泉
有隣堂読書推進委員。

仕事をしていない時はほぼ本を読んでいる尼僧のような生活を送っている。

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  〜今年必読のミステリー〜
  (この鼎談はフィクションですが、実在の人物の声を反映しています)
 
 














新参者・表紙画像
新参者
東野圭吾 :著

講談社
1,680円
(5%税込)

  加藤:   今回は、有隣堂きっての読書家のお2人をお招きして、今年後半に発売になったものの中から、おすすめのミステリーについてお話を伺おうと思います。
それでは、「POPの帝王」梅原潤一さんと「東野圭吾命」の佐伯敦子さんです!
 
  梅原:   はい、どうも。
 
  佐伯:   ミステリーについて話せるなんて嬉しいです! わくわく。
 
  加藤:   それでは早速佐伯さんからお伺いします。 下半期のミステリーの中からこれぞというものはありましたか?
 
  佐伯:   それはもう、東野圭吾『新参者』に決まってるじゃないですかあ!
 
  梅原:    ふふん。
 
  佐伯:   いやあ、何と言われようと、このミステリーは面白かった! さすがの東野圭吾です。
 
  加藤:    今年文庫になった『赤い指』と同じ加賀恭一郎シリーズですよね。
 
  佐伯:   はい。 今回は下町の人情がベースの「泣ける」東野です。 読後もほんわりさわやか。 ああ、読んでよかったと何度も思いました。
 
  加藤:   それは意外ですね。 東野圭吾は最近の刊行点数が多すぎて読むのが追いつけなくなっているのですが、これは読まねばなりませんね。
 
  佐伯:   もちろんです! これだけ書いて筆が落ちない東野はすごい! 梅原帝王にも是非ご一読いただきたい1冊です。
 

後悔と真実の色・表紙画像
後悔と真実の色
貫井徳郎:著

幻冬舎
1,890円
(5%税込)

  加藤:   梅原さんの2009年ベストミステリーは?
 
  梅原:    貫井徳郎『後悔と真実の色』ですね。
 
  加藤:   ああ! ●●●の100倍、●●●●の200倍面白い警察小説だと仰っていたやつですね!
 
  梅原:   バカ! ここで言うな!
 
  加藤:   すみません。 伏字にしますので。 そんなに面白いんですか?
 
  梅原:   貸しただろ! まだ読んでないのか!
 
  加藤:   ひぃ〜っ! 重ね重ね申し訳ございません〜。
 
  佐伯:   私は読みましたよ。 若い女性が襲われ、人差し指だけが切り取られる猟奇的な連続殺人事件。 ネット書き込みによる犯人からの予告。 怖いですよ〜。 それと平行して描かれる警察内部のおどろおどろした人間関係…。
 
  梅原:   それだよ、それ! 個性的な刑事たちによる地道な捜査が臨場感たっぷりに描かれる前半の堂々たる警察小説ぶりも見事だけど、驚きの展開を見せる後半がまたすごいんだ!
 
  佐伯:   そうそう! 最後の展開なんて驚きまくりで、あれよあれよあれあれって感じで、面白かったですね〜。
 
  加藤:   むむむ…。 読んでいない私には何のことやら。 早く読んでお2人の話に参加したいです。
 
  梅原:;   貫井ファンは勿論、あらゆるミステリー好きを満足させるエンターテインメントの大傑作だぞ。 年末の諸々のベストミステリーで上位入賞しなけりゃ暴れてやる!
 
  加藤:   ひぃ〜っ!
 
  梅原:   1位じゃなきゃヤダ!
 
  佐伯:   そんな、駄々っ子みたいな…。 加藤さんのベストミステリーは?
 

ダブル・ジョーカー・表紙画像
ダブル・ジョーカー
柳広司:著

角川書店
1,575円
(5%税込)

  加藤:    自分はミステリー音痴だと思っているので偉そうなことは言えないのですが、柳広司『ダブル・ジョーカー』の格好よさにはしびれました〜。
 
  佐伯:   はいはい。 『ジョーカー・ゲーム』続編ですね。
 
  梅原:   スタイリッシュで最高にイカしたスパイミステリーだな。
 
  佐伯:   スパイ大作戦大好きな人は必読。 いい感じのスパイ加減で、結城中佐の騙し討ちまくりが、なんとも言えずオサレでした。
 
  梅原:   書き込み過ぎでウルサイ小説が溢れている現在、この端正なエンタメぶりは貴重だな。
 
  加藤:   私はこの本を読んで、スパイにだけはなりたくないと思いました。 スパイになれって言われたら、どうしよう。
 
  梅原:   誰もあなたにスパイになれと言わないだろうから心配しなくていいと思うよ。 シリーズものと言えば、大倉崇裕『福家警部補の再訪』も紹介させてくれ。 「刑事コロンボ」への愛に溢れた倒述ミステリーシリーズ第2作。 キャラ立ち最高! 遊び心満載! で1作目の『福家警部補の挨拶』よりグン! と面白くなりました。 趣味的なテーマを万人向きのキチンとしたエンタメに仕立て上げる大倉崇裕はもっと高く評価されるべき。
 
  佐伯:   へえ〜。 私も読んでみよっかな〜。
 
  加藤:   新人作家で、おすすめはありますか?
 

プリズン・トリック・表紙画像
プリズン・トリック
遠藤武文:著

講談社
1,680円
(5%税込)

  佐伯:    遠藤武文『プリズン・トリック』ですかね。
 
  加藤:    江戸川乱歩賞受賞作ですね。
 
  佐伯:   はい。 東野圭吾の帯評がついていたから、つい買ってしまいました。 「必ず二度読む」なんてことも書いてあって、ふんふふん、絶対、二度読むか! と息巻いて慎重にこれ以上ないってくらいケアフルに読んだのに、やはり二度読んでしまいました。 というか、東野圭吾さん大絶賛のトリックもすごかったのですが、最後の一行で、また振り出しに…
 
  加藤:   乾くるみの『イニシエーションラブ』みたいですね。
 
  佐伯:   やられました。 この志の高さは、高すぎです。
 

化身・表紙画像
化身
宮ノ川顕:著

角川書店
1,575円
(5%税込)

  加藤:    私は、日本ホラー小説大賞を受賞した宮ノ川顕『化身』が面白かったです。

 
  梅原:    ああ、あれはなかなか良かったな。
 
  加藤:   受賞作「化身」は、南の島で池にはまった男が何とかして生き延びていく、という短編です。
 
  梅原:   粗筋だけ説明したら全っ然面白くないな。
 
  加藤:   はい。 とにかくリーダビリティは抜群です。 他に収録されている2編もまた違ったテイストで、引き出しの多さを感じさせる新人作家の方でした。 日本ホラー小説大賞受賞作は信頼できる新人賞ですね。 新人作家以外で、注目すべき作家は?
 

龍神の雨・表紙画像
龍神の雨
道尾秀介:著

新潮社
1,680円
(5%税込)

  佐伯:   道尾秀介ですね。 『龍神の雨』は道尾ミステリーの決定版です。
 
  梅原:   ふふん。
 
  加藤:   私も夢中になって読みました。 ミステリー読みの方々は早い段階から犯人が分かったのでしょうが、私は真犯人が分かった時、椅子から転げ落ちました。 ほんと、面白かった〜。 でも内容が重すぎて二度と読みたくないです〜。
 
  佐伯:    “最注目の若き天才”道尾さんの作品は、はっきり言って当たりハズレがありますが、これは大当たりのくちですかね。
 

球体の蛇・表紙画像
球体の蛇
道尾秀介:著

角川書店
1,680円
(5%税込)


 

インビジブルレイン・表紙画像
インビジブルレイン
誉田哲也:著

光文社
1,785円
(5%税込)

  加藤:   発売になったばかりの『球体の蛇』もまた素晴らしいですよ。 やり直しのきかない後悔がテーマで、純文学系の読者にもこの作品はうけると思います。
すごいですね。 新刊が出たら必ず押さえておかなくてはいけない作家ですね。
 
  梅原:   それを言うなら誉田哲也もそうだろう。 『ハング』は『ストロベリーナイト』で一躍ブレイクした著者の珍しく女っ気殆どなしの警察小説。 派手なバイオレンス描写と“日本を影で牛耳る巨悪を潰す”という設定がどこか大藪春彦を想起させる。
 
  佐伯:   誉田哲也の最新刊『インビジブル・レイン』は『ストロベリーナイト』の姫川シリーズ第4弾ですね。 是非『ハング』とあわせてお読みいただきたいですね。
 

  加藤:    そろそろこの辺でお開きにしたいと思いますが、何か言い残したことはありませんか?
 
  梅原:   人気作家の新作や賞を獲った新人のデビュー作ばかりに注目しないで中堅どころの実力派の人達にも目を向けて下さ〜い! あとですね当然のことながら面白いミステリーは今年発売されたものだけではないのです。 読んでいない膨大な量の旧作にも目を向けてください。 で、そういう埋もれた名作を掘り起こすのも我々の使命であるとも思っているわけです。 で、ひとつオススメ。 12月に双葉文庫から復刊される多島斗志之の『クリスマス黙示録』は子供を交通事故で殺され、復讐に燃える殺し屋とヘボ運転でその子供を殺した女のボディガードを勤める女性FBIの一騎打ちがスピィーディに描かれたリンカーン・ライムも裸足で逃げ出す最高に面白いサスペンスです! 皆さん是非読んでみてください!
 
  佐伯:   みなさ〜ん、“東野圭吾を読んで、ぐーんと幸せになりましょう! ”。
次の機会の本の泉の「東野圭吾特集」を楽しみにお待ちください!
 
  加藤:   梅原さん、佐伯さん、お忙しい中本当にありがとうございました!
 

 
文・読書推進委員 加藤泉

 


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