本の泉 清冽なる本の魅力が湧き出でる場所…
第100回 2010年6月17日


●執筆者紹介●


加藤泉
有隣堂読書推進委員。

仕事をしていない時はほぼ本を読んでいる尼僧のような生活を送っている。




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〜有隣堂スタッフ有志が選んだオールタイムベストワン〜
一緒に棺桶に入れてほしい本!〜

おかげさまで、この「本の泉」も連載100回目を迎えることになりました。
今回は特別企画として、有隣堂スタッフの有志にこれまで読んだ中で一番の本を選んでコメントをいただきました。
どんな本が出てくるでしょうか?! 皆様、お楽しみ下さい!



 (書名五十音順) 

     ル−シ−・モ−ド・モンゴメリ 『赤毛のアン

私の持っている「赤毛のアン」シリーズはきちんとケースに入っている素敵な装丁の本です。
このアンの世界に憧れて何度も読み返しました。
カナダの美しい自然の中にあるグリーゲイブルスを思いつつ友達と「赤毛のアン」ごっこもしました。
小説に出てくる美味しそうな御馳走を想像し、アンとダイアナとのケンカにハラハラし、ギルバートとの恋にドキドキしたものです。
今でも読み継がれている永遠の名作であり私の宝物です。




*ケース入りの講談社版は現在絶版の為入手できません。


(川崎BE店 大嶋慶子)





 

   ちばてつや 高森朝雄 『あしたのジョー

これ、私が小学校4年生の時に親父の親友にかしてもらって(当時は全20巻)兄貴と一緒にむさぼるように読んだことを覚えている。
普段、私はこういった企画では毎回「燃えよ剣」新潮文庫をお薦めするので今回は「燃えよ〜」以前に自分の血となり肉となった本を紹介します。
山P主演で映画化されるけれど、矢吹丈のイメージが崩壊するので絶対見ません! !


(アトレ恵比寿店 二見太二)

石田徹也全作品集・表紙画像
石田徹也全作品集


8,925円(税込)
   石田徹也 『石田徹也全作品集

あれは二年前の冬、とある美術館で「体液」と題された作品を目の当たりにした私は、その悲痛なモチーフとは裏腹に、ああ、この一枚の絵さえあればあらゆる意味で自分はもう自画像を描かなくて済むのだと、不思議な安堵を覚えていました。 氏の描く人物に造形が似ているというのは私の宿命的な誇り。 むしろ棺桶の外に置いていきたい一冊と言った方が適切かもしれません。 2005年、31歳で生きる事をやめてしまった画家の、脈打つ集成。


(本店 古畠徹生)

おんなのことば・表紙画像
おんなのことば


1,313円(税込)
   茨木のり子 『おんなのことば

自分の本棚を眺め、何年かに一度とり出してしばらく時間をわすれてページを捲る。
最初の一篇「自分の感受性ぐらい」は、当時の自身のことを見透かされて「ばかものよ」と叱ってもらった気がした。 ひとたび開くと、それまでは通りすぎていたのに、その日その時の感じ入る一篇に会い、成長や自省に気づかせてくれる。 そして感謝の気持ちにつつまれて、優しく美しい表紙をぱたん、と閉じる。


(店舗支援室 田中京子)








 
   手塚治虫 『空気の底

中学高校と1時間半かけて通学していました。 電車の中ではもっぱら読書。
その中でもモーレツに読んでいたのが手塚治虫。
その歳まで少年少女の通過儀礼であるマンガ・アニメ・ゲームに全くハマらなかった反動なのか、秋田文庫の短編集を皮切りに片っ端から読み耽りました。
一番感受性が強かったこの時代に手塚漫画に打ちのめされたからこそ、曲がらずすくすくと育ってこれた(はず)。
『人生で大切なことはすべて手塚漫画から学んだ』と言って過言ではありません。


(横浜駅西口店 天羽雅代)

三国志・表紙画像
三国志


各980円(税込)
   吉川英治 『三国志

どれか1つだけ、といわれたら何度でも読み直したい三国志を。
さらに数ある中から、吉川版をチョイスしてみました。
初めて読む方には少々ハードルが高めですが、全巻を読破し終えた後の爽快感はコレに勝るものなし! 何度読んでも、いつ読んでも色あせない珠玉の名作だと思います。


(川崎BE店 小林あゆみ)








 
   森鴎外 『山椒大夫

ものごころついた頃、はじめて出会ったお話は「あんじゅとずし王」(子ども版『山椒大夫』といったところ)だったとおぼろげに記憶しています。 人買いにだまされた母と姉弟の悲しい物語。 こんなことが世の中にはあるんだ〜と唖然呆然とした自分は、実に幸せな子ども時代を両親に過ごさせてもらったのだと感謝しています。 後年、鴎外の「山椒大夫」を読んでそう思いました。 生きていると個人の力ではどうしようもないことがある。 それでも、生きていればきっといいことがあるに違いない。 そんな希望の光を見せてくれる、悲しくも美しいこの小説が大好きです。


(アトレ恵比寿店 加藤泉)







 
   長田弘 『食卓一期一会

長田弘さんが好きだと言うと、詩なんか読むの〜、という反応が返ってくる。
詩=わからない、というイメージが強いのかあまり人気のあるジャンルではなさそうだ。
「食卓一期一会」はどんな小説より絵本より教訓より、コトバが心にするっと入ってくる。
食べ物は基本であり、人生だと改めて腑に落ちる。
忙しさにかまけて食をないがしろにしている日々に、襟を正したくなるコトバとゴハンがいっぱいです。


(アトレ目黒店 酒井ふゆき)

新編啄木歌集・表紙画像
新編啄木歌集


1,470円(税込)
   石川啄木 久保田正文 『新編啄木歌集

三島由紀夫全集全42巻・補巻1・別巻1ですが、一冊ということなので、新編啄木歌集です。 たった31文字から溢れ出る啄木の生きた証は、年齢を重ねるごとに、より深く私の心に響いてきます。 「一握の砂」が発行されたのは約100年前。 時代が変わり、システム万能の現代でも、人の心はそんな簡単に変わらないという真実。 不思議な安堵感を与えてくれます。 最近では「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ 花を買い来て 妻としたしむ」に流石! と唸ったりしています。 私は、アンチ「電子書籍」派ではありませんが、棺桶に入れてもらうのは、やっぱり紙の本にして頂きたいと思っています。


(店売事業部 中村努)

ちいさいおうち・表紙画像
ちいさいおうち


672円(税込)
   ヴァ−ジニア・リ−・バ−トン 『ちいさいおうち

おそらく記憶の中で、初めて目にした本がこの「ちいさいおうち」だったと思う。
成長するにしたがってその存在はすっかり忘れていたが、有隣堂に入社して児童書売場で20年ぶりに再会した。
いま思うと素敵な絵本を母が選んでくれたと思う。
初めて出合ったこの本を人生最後に持って行きたい。


(アトレ恵比寿店 出川由夫)








 
   矢沢あい 『天使なんかじゃない

棺桶まで持って行きたいマンガはこれしかありません。
小学生の頃に連載されていた「りぼん」を発売日に本屋へダッシュで買いに行ってました。
主人公・冴島翠と須藤晃の恋愛はもちろんのこと、かけがえのない友情に涙が止まりません。
何度読み返しているのか分からない程読んでいます。 私の青春バイブルです! !
矢沢あいは天才だ〜! ! ! !


(藤沢店 菅野貴子)

夏への扉・表紙画像
夏への扉


777円(税込)
   ロバ−ト・A.ハインライン 『夏への扉

ご存知、SF史上の名作です。
主人公はお人好しで誠実な天才発明家。 友人恋人に裏切られながらも自分を信じ、コールドスリープを使って人生逆転の勝負に出る…。
ハラハラするけど痛快で爽やか。 おまけに猫のピートがかわいい。 決して古びることのない、心温まる一冊です。
残していく大切な人たちに「ちょっとコールドスリープに行ってくるよ。」ってメッセージ代わりに。


(アトレ目黒店 倉田裕子)

西の魔女が死んだ・表紙画像
西の魔女が死んだ


420円(税込)
   梨木果歩 『西の魔女が死んだ

周囲と馴染めず不登校になってしまったまい。 彼女にむけられる“魔女”ことおばあちゃんの言葉は厳しいけれど愛情にあふれていて、胸を打たれました。 学生の頃に出会っていたら私の中の何かが変わっていたかもしれない、もっと早く読めばよかったと後悔した本です。
私もいつか訪れる自分の死に悲しむ人がいたら、西の魔女のように「タマシイ、ダッシュツ、ダイセコウ」と伝えることができたらいいな、と思います。


(厚木店 岩堀華江)


今から十年以上も前に読んでから、ずっと自分の中で一番の本です。
自然の描写がきれいで文体もさらっと読みやすく、小学校高学年からおすすめできると思います。
この本から学んだのは『どんなことでも自分で決め、最後までやりぬく』ということ。
とてもシンプルですが、なかなか難しいことだと思います。
大人になった今でも、時々読み返しては新たな発見をしています。


(ルミネ横浜店 本郷沙耶香)

ぺろぺろん・表紙画像
ぺろぺろん


1,050円(税込)
   筒井敬介 東君平 『ぺろぺろん

熱を出して幼稚園を休んだ日に母が買ってきた。 めったに本など買わぬ人が。
ヘビの女の子ぺろちゃんの自分探しの物語。 童話にあるまじきイカれた文体が、幼い私を魅了した。 以来、幾度かの引越しや本棚整理にも耐え、ずっと私のそばにあり続けた。 人生最高の1冊! と言うほどじゃないけれど、あの世にただ1冊携えられるのならば、私は「ぺろぺろん」を持って行く。
母に逢ったら聞いてみたいのだ。 ママ、あの時何を思ってこの本を選んだの?


(八王子店 吉澤みどり)

豊饒の海・表紙画像
豊饒の海


第1巻 660円
(税込)
第2巻 740円
(税込)
第3巻 620円
(税込)
第4巻 540円
(税込)
   三島由紀夫 『豊饒の海

今までに目を通してきた2万冊以上の書物から究極のものをと問われればこの1冊です。
三島由紀夫著『豊饒の海』四部作。
著者自身『僕の全てを此処に込めた』といわれただけあります。
あまりの芳醇な日本語に酔いしれ、息継ぎをしながら
立眩みを起こしながら読みました。
そんな経験は学生時代、後にも先にもこの1冊のみでした。
翻訳さえうまければノーベル文学賞だったと確信しています。


(戸塚店 安田信之)






 

   山田詠美 『ぼくは勉強ができない

20代の頃、タイトルと装丁に魅かれて手にした1冊。 その日から高校生である彼、時田秀美クンに恋してしまったのでした。 妄想はふくらみ、なぜ私の高校時代に彼のような人にめぐり合えなかったのかと嘆き、こうなったら自分が桃子さんのようになってやると(??)心に誓ったあの日々。 すっかりおばさんになった今読み返しても、やっぱり秀美クンはカッコいい!


(本店 高谷久美子)

星の王子さま・表紙画像
星の王子さま


500円(税込)
   アントア−ヌ・ド・サン・テグジュペリ 『星の王子さま

小さい頃読み聞かせてもらった記憶があるが、内容なんて全然憶えていなかった。
ちゃんと読んだのは十代の頃。 それから何回か読み返す度に感じ方が違った。
十代の頃は、キツネの事をよく考えた。 二十代の頃は、星の住人たちの事を考えた。
「本当に大切なものは目には見えない。」昔も今も大切にしていることば。
つまづいたり迷ったりした時、支えてくれるこれから先もずっと宝物の本。


(横浜駅西口店 岩井静花)






 

   アレクサンドル・デュマ 『モンテ・クリスト伯 全7巻

恋愛アリ陰謀アリ、ドキドキハラハラ、イライラソワソワ、これぞ娯楽小説の真骨頂!
好きすぎてこの本のことを考えるだけで陶然としてしまう。
最後の10ページは読み終わるのが寂しくて、1時間以上ページを行きつ戻りつしました。
『モンテ・クリスト伯』をむさぼり読んだあの時間、なんて私は幸せだったのでしょう。


(横浜駅西口店 佐瀬康子)








 
   浅田次郎 『勇気凛凛ルリの色

一緒に棺桶に入れて欲しい本を一冊選べと言われても、沢山あり過ぎてなかなかに難しいのですが、敢えて一冊選ぶとするならば、浅田次郎の『勇気凛凛ルリの色』を選びます。
この『勇気凛凛〜』は、僕が大学卒業後の進路について路頭に迷っていたとき、人生の道標となった本です。
浅田次郎さんの生き様に触れ、感激し、心がふるえました。
「この本と出逢えなかったら、今の私はなかった」
大袈裟ではなくて、つくづくそう思います。


(横浜駅西口店 佐藤正博)






 

   大藪春彦 『蘇える金狼 野望篇 完結篇

松田優作(自分と同世代で彼に影響を受けていない男を基本的に信用しません)主演による映画化作品共々全ての男が読む(そして観る)べきピカレスク・バイブル。 この本を、授業中に教科書の裏に隠して読み耽る事で主人公朝倉哲也の反社会性に何がしかの共鳴が出来ている積もりになっていた青い高校生だった自分が恥ずかしくも誇らしい。 おいおい! 角川文庫品切れかよ! ! 男稼業もお終いだな。


(横浜駅西口店 梅原潤一)







 

   法月綸太郎 『頼子のために

もっと派手で痛快、はたまた長大な小説は沢山あります。
しかし、本作はミステリィ小説でありながら、芥川賞受賞の純文学にもひけをとらない言葉を紡ぎ、一組の夫婦とその娘の静かな情景を描いている傑作であります。
「愛しています」という言葉だけでは表現しきれない、その心の姿は、真相に辿り着くに至り、深く、悲しく、怖い…。
ここまで愛おしく思える真相を私は他に知らない。


(アトレ新浦安店 広沢友樹)

黄金の猿・表紙画像
リヴィエラを撃て


上巻 740円(税込)
下巻 620円(税込)
   高村薫 『リヴィエラを撃て

まるで北アイルランドの空のように重い小説である。 そして高村作品独特
精緻な描写という大きな壁もある。 しかし何度読んでも飽きないのだ。
薄幸なテロリスト、世界的なピアニスト、日本の刑事、そして諜報部員たち。 出てくる男たちがとにかくカッコよく、儚い。 女性たちも愛おしく、そして儚い。
彼ら一人ひとりの物語が読了後10年以上経った今でもこの胸を鷲掴みしている。
ああ、人生であと何回この物語を読めるのだろう。


(小田原ラスカ店  佐藤真)




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