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第23回 2007年4月6日 |
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わが心の第四回本屋大賞 | ||||||||
4月5日、第四回本屋大賞が発表になりました! 大賞受賞作は佐藤多佳子『一瞬の風になれ 1・2・3』です。 この「本の泉」でもご紹介したことがある作品ですが(第14回)、本屋大賞受賞により、ますます多くの読者を獲得するのではないでしょうか。 嬉しい限りです。 ちょいと待っておくんなせえ、皆さん。 大賞受賞作以外にも面白え小説がたくさんあるってえことを、お忘れではねえですかい。 特にツウの間では、本屋大賞11位から20位が真のベストテンと言われていること、ご存知ねえたぁ言わせやしませんぜ。 はっ! 今、お目付け桜の金さんが降臨したような気がいたします。 確かに、『一瞬の風になれ』だけが書店員の支持を得ているわけではないですよね。 というわけで、今回の「本の泉」は、"わが心の第四回本屋大賞"というテーマにいたします。 有隣堂スタッフ有志が"本屋大賞は『一瞬の風になれ』だったけど、私にとっての第四回本屋大賞はこの作品!"に選んだ1冊を熱く語ります(選考基準は本屋大賞のそれに準拠いたしております)。 この中に、皆様にとってのマイ本屋大賞が見つかるかもしれませんぜ。 |
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(書名五十音順) | ||||||||||
失われた町 集英社・1,680円 (5%税込) |
『失われた町』 三崎亜記:著 好みが分かれる作品の最たる見本のような世界観に感応しました。 禁じられた喪失の哀しみと時の流れによるその昇華。 想いをつなげていく同志間の深い連帯。 何よりも意思を持った町のイメージの屹立。 小さい頃繰り返し見た夢、飛び続ける空から自分の町に降り立つと誰もいない。 目覚めたときの恍惚と恐怖を思い出させてくれました。 (第一営業本部 中村豊) |
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陰日向に咲く 幻冬舎・1,470円 (5%税込) |
『陰日向に咲く』 劇団ひとり:著 どう仕様も無い 御莫迦さんたちは、 それでも歩き続けて、 綺麗な花を咲かせる。 (ルミネ横浜店 佐々木章子)
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風が強く吹いている 新潮社 1,890円 (5%税込) |
『風が強く吹いている』 三浦しをん:著 このお話には、特別な事は起こりません。 同じ大学寮に住む十人の仲間が箱根駅伝を目指すだけのお話です。 でも、箱根駅伝をリアルで見て育った私にはとても思い入の強い小説です。 私の大好きな風景、海岸道路から小田原へそして箱根の山へ。 そして強い心を持つことがテーマのものすごい小説です。 きっと前を向いて走れば、誰にでも風は強く吹いてくる、そしてその強さを本気で手に入れたいと思った一冊です。 私の心の本屋大賞2007です。 (厚木店 佐伯敦子)
本との出会いにはタイミングも大事だと思います。 それを痛感したのがこの『風が強く吹いている』で、去年私が最も必要としていたものを全て教えてくれた小説でした。 一言で言ってしまえば「強さ」なのですが…。 私にとって人生の転機であった2006年にこの本と出会えたことは、神の采配だと言っても過言ではありません。 神様ありがとう。 そして、三浦しをんさん、ありがとう。 それにしても清瀬灰二、あんたは何回読んでもいい男だね!(←木の実ナナふうに) (藤沢店 加藤泉) | |||||||||
金色の雨がふる 光文社 1,785円 (5%税込) |
『金色の雨がふる』 桐生典子:著 人の感情は理性では割りきれない、この点を感じさせてくれる不思議な小説である。 読んでいくうちに妙な焦燥感につきまとわれる。 必死に走る夢をよく見るが、そんな夢のあと味によく似ている。 時空を超えた2組の男女、とくに奈生子の気持ちの揺れる様が、もどかしくもいとおしい。 他者を求める心の強さは、生きることへの執着のあらわれかもしれない。 この、あとを引く感覚が、伊坂や恩田を差しおいて私にとっては一番になっている。 (川崎BE店 小宮久美) |
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銀河の ワールドカップ 集英社 1,995円 (5%税込) |
『銀河のワールドカップ』 川端裕人:著 2006年、W杯の年に選ぶ1冊はやはりサッカー小説である。 W杯の余韻に浸りつつ、一気に読んでしまった。 元ストライカーの花島が少年クラブチーム「桃山プレデター」のコーチとなり、才能はあるが個性も強烈なメンバーを率いて日本一となり、やがて銀河系最強といわれる「レアル・ガラクシア」と対戦する。 という内容だが、コレが実に良い! 子供たちのキャラクターが立っており、文体はスピーディーで読んでいて非常に爽快である。 出てくる選手やチームの名称にも実際の選手などに対するオマージュが見て取れ、ニヤリとさせられる。 読んだ後に、無性にサッカーがしたくなる、そんな小説である。 (川崎BE店 渋谷明洋)
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終末のフール 集英社・1,470円 (5%税込) |
『終末のフール』 伊坂幸太郎:著 「八年後に小惑星が落ちてきて地球は滅亡する」といううたい文句を見ると、良くありがちなパニック小説にみえる。 けれど「と、発表されてから5年後」と続けて不思議な「伊坂空間」が出来上がった。 読後はとにかくさわやかだ。 自分の中で、自分の毎日を見つめ直すきっかけになった「私の大賞本」です。 (川崎BE店 小林あゆみ) |
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シンデレラ・ティース 光文社・1,575円 (5%税込) |
『シンデレラ・ティース』 坂木司:著 この本は疲れたココロを"す〜"と軽くしてくれます。 普段は、全く本に"癒し"など求めておりませんが、この『シンデレラ・ティ−ス』は、読んだ後、「よしっ! 私も明日からもう少しがんばってみよう!! 」という気持ちになりました。 他の坂木司さん作品と同じく、登場人物を通して語られる言葉は、心にぐっときます。 どなたにも、今、いちばん読んでほしい1冊です。 (厚木店 岩堀華江) |
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箪笥のなか 講談社 1,365円 (5%税込) |
『箪笥のなか』 長野まゆみ:著 この『箪笥のなか』には、いつもの道からふとわき道に入ってしまったようなドキドキがあります。 話しはなんてことない(?)日々の移り変わりですが、そこに箪笥が呼ぶ非日常が入り込んでおかしなことになってる。 でも本人たちはいたって淡々と日々を過ごしている。 川上弘美にも通じるその不思議さ加減がとても妙味です。 長野まゆみの奥の深さを感じられる一冊でした。 (横浜駅西口店 富澤明子)
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デッドライン 角川書店 1,890円 (5%税込) |
『デッドライン』 建倉圭介:著 近年、めっきり新刊が少なくなった冒険小説。 それを嘆いている方にオススメします! 時は太平洋戦争末期。 機密情報を手にし逃げる男と女、追うアメリカ軍。 果たして二人は無事に追っ手から逃れタイムリミットまでに日本へ、そして目的を果たすことができるのか!? 本当にハラハラドキドキ、スリリングな逃亡劇にきっと釘付けになるはずです。 そしてラストはただ涙・・・ 決してB級ではないA級の冒険小説です。 冒険小説ファンには外せない作品なんです! (小田原ラスカ店 佐藤真)
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贄の夜会 文藝春秋 3,000円 (5%税込) |
『贄の夜会』 香納諒一:著 ここ数年で間違い無く最も面白かった犯罪小説。 「文春ベストミステリー」ランク外は考えられない(自社本なのに・・・)「このミス」7位入賞でさえ低すぎる評価だと思う。 近年のベストミステリは大沢、宮部、東野といったビッグネームか伊坂、道尾、などといった目新しい人のみにスポットをあて、実力をメキメキとつけキチンとした仕事をしている中堅どころを蔑ろにし過ぎだと思う。 特にこの作品は警察小説としての骨格が大変しっかりしていて、いつもだと「ちょっとクサイなあ」と感じてしまう香納氏独特のダンディズムが変に小説から浮き出ることがなく、むしろいいアクセントになって小説の味わいをより深めていて所謂ハードボイルド的な世界観が苦手な人も愉しめる万人向けのエンターテインメントとして成立していてその完成度はちょっと凄いものがある。 「これが売れなきゃウソだ!」と煽りまくりのポップでこの半年で90冊近く売りましたがまだまだ全然満足できない!といったところです。 (横浜駅西口店 梅原潤一)
※品切れにつき、ご注文いただけません。 |
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ピカルディの薔薇 集英社 1,785円 (5%税込) |
『ピカルディの薔薇』 津原泰水:著 本を開く。 そこには目くるめく幻想的で不思議な物語が待っている。 怪奇や死や夢のドラマは、どれ一つとして目を離すことができない。 読み進むうち、自分の体が揺らいだと同時に、体全体が渦状になり頭から本の中に吸い込まれて行くような感覚。 夢? 本を閉じる。 夢から醒めたのではない。 また夢を見る為の少しの休憩時間なのだ。 この本には魔力がある。 作家津原泰水には、この魔力を生み続ける超人的なエネルギーが溢れている。 希有の作家である。 (第二営業本部 中村努)
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夜は短し歩けよ乙女 角川書店 1,575円 (5%税込) |
『夜は短し歩けよ乙女』 森見登美彦:著 「『おともだちパンチ』を御存知であろうか」・・唐突な語り出しに、このお話についていけるのか?と不安になりました。 でも、読み進めていくと違和感が消え全てが愛らしく感じるので不思議です。 謎の老人と飲み比べするために夜の京都を練り歩き、巨大な緋鯉のぬいぐるみを背負って学園祭を見学する。 もう、目が離せない!そんなお話です。 思い出しては、思わず微笑んでしまう作品です! (東戸塚店 柏村靖子)
ズバリ私にとっての大賞は、『夜は短し歩けよ乙女』です!こんなにも可愛らしくて、ぷっと笑えてワクワクする摩訶不思議な小説は初めてです。 恋愛小説を普段あまり好んで読まない私でも、"どこまでも天然でマイペースな可愛い乙女"に恋をする"どこまでも不器用で間抜けな先輩"を励まし応援せずにはいられず、自分の手をぎゅっと握り締めながら、いつの間にか一気に読んでしまいました。 (藤沢店 菅野貴子) |
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レインツリーの国 新潮社 1,260円 (5%税込) |
『レインツリーの国』 有川浩:著 わが心の本屋大賞は、図書館シリーズでノミネートされた有川浩の『レインツリーの国』です。 皆様ご存知の田中芳樹、新井素子に連なる俊英ラノベ作家の作です。 本人曰く『今回は飛び道具なしの直球勝負の恋愛小説です』というだけあり、実に熱い。 ただ泣かせる事を狙ったあざといものと違い真っ直ぐすぎです。 昨年最も赤面させられた小説といえます。 銃器抜きでもいけるジャンの有川の新境地ぜひご一読を。 (戸塚モディ店 安田信之) |
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文・読書推進委員 加藤泉
構成・宣伝課 矢島真理子 |
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