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第33回 2007年9月6日

●執筆者紹介●


加藤泉
有隣堂読書推進委員。

仕事をしていない時はほぼ本を読んでいる尼僧のような生活を送っている。

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上橋菜穂子 特集

今回は上橋菜穂子特集をお送りします。
上橋菜穂子さんと言えば、『獣の奏者 (12)』が "「本の雑誌」が選ぶ2007上半期ベストワン" に選ばれ、今、最も注目されている作家です。
ファンタジーだから…、児童書だから…、という理由で読まずにいるのはもったいない! と立ち上がった有隣堂スタッフ有志が、おすすめの上橋作品をご紹介いたします。
 

『精霊の守り人』
   (1996年・偕成社/現在、新潮社より文庫も刊行)

ただ者ではない予感は、ありました。 でも、期待外れだったらどうしようと読むのを迷ってもいました。 しかし! 読んでみたら…面白い! 夜中でも他人の家に乗り込んでいって、握手しながら触れ回りたいという衝動にかられました。
とにかく、本を開いた瞬間から物語世界が現実に「ある」のです。 しかも、読んでいる自分も登場人物と同じ空気を吸ってしまう。 読み終えるまで、あっという間でした。

(東戸塚店 柏村靖子)


はじめて上橋作品を読んだのは今年の6月。 北海道に向かう途中でした。 『精霊の守り人』が文庫本になって「そーいや昔、友達が絶賛してたな」という軽い気持ちで手に取ったのです。 しかし、あまりに世界にはまり込みすぎて手前の羽田第1ターミナル駅で下りるはずが第2ターミナル駅に行くまで気づかず。 必死に搭乗手続きしたのに飛行機の搭乗アナウンスも聞き逃しそうになり……と散々な目に。 なのに次を読まずにはいられないなんて、恐ろしいです。 上橋作品。

(ルミネ横浜店 富澤明子)


先日、お客様から「書店員ならこの本は読まなくちゃいかん!!」と大プッシュされ、私はファンタジーが苦手で普段全然読まないのですが、悔しくなってすぐに読みました。
ファンタジーだしなーと思って読まずにいた私が馬鹿でした。 「面白い!」の一言です。 精霊に卵を産みつけられ、命を狙われることになった皇子チャグムを守るために用心棒となった主人公バルサが、とにかく強くて優しくてカッコイイです! この本に出会わせてくれたお客様に感謝です!!

(厚木店 菅野貴子)
 
精霊の守り人・表紙画像
精霊の守り人

偕成社
1,575円
(5%税込)


精霊の守り人
軽装版


偕成社
945円
(5%税込)


精霊の守り人
(新潮文庫)


新潮社
580円
(5%税込)

『闇の守り人』
    (1999年・偕成社/現在、
新潮社より文庫も刊行)

茅田砂胡や萩原規子と同じ匂いのする才能でした。
上記2名のファンは即購入するように。 以上

え 感想ですか?

ん。 あまりに見事な武である舞でした。
31歳の槍使い、主人公である女用心棒の歪められた過去に迫る物語です。 骨太で真っ直ぐで更に誠実。
翻訳すれば海外でも受けるであろう異世界観たっぷり。
翻訳ファンタジーの芳醇な物語に親しんだ世代をも納得させ酔わせるほどの物語でした。


(販売促進室 安田信之)


いつも上橋さんのファンタジーを読むと、作り上げられた世界、そして登場人物たちに何て血が通っているのだろうと感嘆してしまいます。 本作もそうでした。
『精霊の守り人』よりこちらを挙げた理由は、バルサが自らの過去を見つめることにより心の動きがより細かく描かれておりますし、ジグロの登場回数も増えていますから(ここが最大のポイント)!
最後はもう胸が熱くなるばかり。 カンバルの少年・カッサの成長を描く物語としても爽やかな物語でもあります。

(小田原ラスカ店 佐藤真)
 
闇の守り人・表紙画像
闇の守り人

偕成社
1,575円
(5%税込)


闇の守り人
軽装版


偕成社
945円
(5%税込)


闇の守り人
(新潮文庫)

新潮社
620円
(5%税込)

上記2作を含めた「守り人」シリーズ


「守り人」シリーズは「とにかくおもしろい物語が読みたい!」という方に非常におすすめの作品。 この作品の最大の魅力は主人公バルサにあると思う。 彼女はめちゃくちゃ腕っぷしの強い30代の用心棒で、まず戦闘シーンが格好良い! 胸がスッとします。 そしてその心の在り方がなんというかとても姿勢が良い。 しびれる。 何事にも目をそらさずに対峙している。 一口では言えないが「強い心」とはどういうものか、彼女を見るとそれがわかる気がする。

(横浜駅西口店 根岸彩)


上橋菜穂子さんといえば、やはり、「守り人」シリーズでしょう。
小野不由美さんの「十二国記」の新作に飢えていた私にとっては、まさに、天からの恵み!! ありがとうございます、という感じです。
コレが、児童書? と、思わずにはいられない、しっかりした設定、登場人物、広がりをみせる世界観と語りだしたら、キリが無い。 でも、なんと言っても、主人公・バルサの「強さ」に魅せられ、憧れます。
アニメ化とともに、一般の文庫にした新潮社さんに、感謝です。 様々な人に、読むきっかけができて嬉しいです。
もちろん、『獣の奏者』もハラハラ、ドキドキでおもしろいと思いますが…。

(厚木店 岩堀華江)


【ハードカバー】
「守り人」シリーズ
(8冊)

偕成社
各1,575円
(5%税込)


【軽装版】
「守り人」シリーズ
(3冊)

偕成社
各945円
(5%税込)

【文庫】
「守り人」シリーズ
(2冊)

新潮社
1:580円
(5%税込)

2:620円
(5%税込)

『狐笛のかなた』
    (2003年・理論社/現在、新潮社より文庫も刊行)

草むらを走り抜ける狐のような勢いで読み終えました。
忘れっぽい私が、ただの一度も頁を後戻りしなかった。
目が文字を追うよりも一瞬早く物語が動くのです。
主人公だけでなく、登場人物すべてが生きていて
それぞれの思い、苦しみ、喜びが大変丁寧に描かれている。
評判に違わぬ書き手だと思います。
装丁、挿絵がいいのでハードカバーがおすすめですよ。

(伊勢佐木町本店 吉澤みどり)


映画のハリー・ポッターさえ途中で挫折した自分には、ファンタジーを楽しむための何かが決定的に欠けているのだと思い込んでいました。
『獣の奏者』の"ファンタジー嫌いの人にこそ読んでほしい"という北上次郎さんの帯文句を目にしても半信半疑でした。
それが、読み始めたら止まらない止まらない。
獣と心を通わせる主人公の姿に、『風の谷のナウシカ』を初めて見たときの感動を思い出しました。
続けて、前作『狐笛のかなた』も読みましたが、これがまた『獣の奏者』を上回るほど胸に響く作品で、上橋さんが敬愛なさっている藤沢周平の世界に近いものを感じました。
生きとし生ける全ての物を平等に見つめることのできる、スケールの大きい作家だと思います。

(アトレ恵比寿店 加藤泉)

 

狐笛のかなた・表紙画像
狐笛のかなた


理論社
1,575円
(5%税込)


狐笛のかなた
(新潮文庫)


新潮社
620円
(5%税込)

獣の奏者 12 (2006年・講談社)


想像上の獣のはずの王獣(おうじゅう)と闘蛇(とうだ)の息づかいが聞こえる。 確かに生きている。
文章は簡潔にして的確、しかも美しい。 動きのある戦いの描写も細部にわたってリアルだが、特に二頭の王獣が大空で番う場面は美しくも感動的だ。
物語は主人公の少女エリンと王獣との愛を主軸としながらも、国家、戦争、法律、自然をも懐に包みながら展開して、目を離せない。 作者のストーリーテラーとしての力量は圧倒的だ。
団塊の世代の男も「ファンタジー」にのめりこむことができる。 考えてみると『雨月物語』も『銀河鉄道の夜』もファンタジーなのかも知れない。
尊敬する出版社の編集の方に薦められなかったら、この素晴らしい物語と出会うことはなかった。 感謝。

(販売促進室 中村努)


大公の宝である闘蛇を全て死なせてしまった闘蛇衆の母は処刑され、孤児となったエリンは、蜂飼いのジュアンに育てられます。 そして、王獣保護場で運命の王獣リランと出会います。 エリンとリランの"愛情と信頼の絆の物語"の始まりです。 王獣が人に心を開く瞬間は、なぜかとても愛おしい。 ファンタジー嫌いの私をどこまでも魅了するこの作品に上橋菜穂子という作家の底力を感じました。 児童文学界の怪物ベストセラー「守り人」シリーズも"絶対のお薦め"です。

(ヨドバシAKIBA店 佐伯敦子)


「上橋菜穂子」にはまった最初は『獣の奏者』。
北上次郎氏の紹介文にひかれて、読み、そこから怒涛の勢いで「上橋菜穂子本」を読み漁った。
なにがそんなに面白かったのか、上手くその感触を伝えられないんだけど、登場人物が、みんなよかった。 イイ奴も、ヤナ奴も、どいつも、こいつも主人公張れる勢いがあって、イイ事も、ヤナ事も、どのエピソードも切なくて、うそ臭さがなくて、どっぷりこの世界に漬からせて貰えてた。
この本で気に入らないことは、読み終わってしまった事。
もっともっと、読みたい、読みたい、読みたい!!
できれば蜂飼いのジョウンの物語も書いて欲しい!

(伊勢佐木町本店 大平雅代)
 

獣の奏者 1・表紙画像
獣の奏者 1


講談社
1,575円
(5%税込)


獣の奏者 2・表紙画像
獣の奏者 2


講談社
1,680円
(5%税込)


大の大人をこんなにもワクワクさせる物語に久し振りに出会ってしまった。 終ってしまうのがこんなに惜しいストーリーに久し振りに出会ってしまった。 架空の生き物であるはずの闘蛇や王獣が生き生きと広い草原を動き回るのが目に浮かぶ…。 同じファンタジーでも文章の繊細さはさすが日本人作家の作品だ。 多くは語りません。 とにかく読んで欲しい。

(藤沢店 大嶋慶子)


この本は、朝の5時までつい読み耽ってしまうほどの魔力がある。 まるで、映画のフィルムのように、途切れることなく続く、壮大な架空の世界。 しかし、そこに存在している登場人物は、ファンタジーお決まりの美男美女ではない。 いずれも、現実社会で生きる私達と同じように悩み、迷いながら、それぞれの理想郷を探し求めている。 だからこの物語は、ファンタジーという枠を超えて幅広い読者の心をつかみ、寝不足にさせるのだろう。

(ランドマークプラザ店 A・M)


「(—知りたくて、知りたくて…)」
思いを知りたい、思いを伝えたいというあたりまえの欲求が、あたりまえに満たされないせつなさ・もどかしさ。 ようやく気持ちが通った瞬間の痛いほどの喜び。 胸がざわざわきりきりするような重いテーマを抱えた愛の物語です。 最終章まではただただ夢中で「こんな作家さんがいたなんて!」とそれまでの未読を悔やみながらの読書でしたが、最後が! 完璧にやられてしまいました。 涙、涙、涙。 不粋ですが後日談が気になってなりません。

(ルミネ横浜店 松尾愛子)
 
 

文・読書推進委員 加藤泉
構成・宣伝担当 矢島真理子

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