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第47回 2008年4月10日 |
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我が心の第五回本屋大賞 | ||||||||
4月8日、第五回本屋大賞が発表になりました! 大賞受賞作は伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』です。 今年も去年同様、有隣堂スタッフ有志に”本屋大賞は『ゴールデンスランバー』だったけど、私にとっての第五回本屋大賞はこの作品!”を選び、熱く語ってもらいました。 本屋大賞ノミネート作ばかりでなく、この中からも是非お選びください。 |
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(書名五十音順) | ||||||||||
あなたの呼吸が 止まるまで 新潮社・1,575円 |
『あなたの呼吸が止まるまで』 島本理生:著 ノミネート作品以外で一冊選んでみました。 今年度後半から康本雅子というダンサーに注目していて、身体表現にハマっています。 この作品にも舞踏家の父が登場するので、そのマイナーな雰囲気が伝わってきます。 作品の主題としては12歳の小学生である娘の人間関係にスポットが当たりますが、『大きな熊が来る前に、おやすみ。』に続き 少しダークな社会性を描きます。 島本理生は切ない恋愛小説だけじゃないんだぞという面を感じてもらえたら嬉しいです。 (横浜駅西口店 広沢友樹) |
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有頂天家族 幻冬舎・1,575円 |
『有頂天家族』 森見登美彦:著 『太陽の塔』から(中略)『夜は短し歩けよ乙女』ときて森見氏はこうなったのか、と膝を打つ。 人から思い切って人外の化け狸に主人公を移したことで、森見氏の夢と現をまたにかける語り口が絶好調に発揮されたと感じた。 とまぁ、堅苦しい批評は置いといて。 とにかく読んでて楽しい! お前らバカだなぁとツッコミを入れつつ、暑苦しいくらいの家族の絆にホロリとして。’07エンタメ小説ナンバーワンです。 (ルミネ横浜店 富澤明子) |
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永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢 講談社・1,680円 |
『永遠を旅する者
(ロストオデッセイ 千年の夢)』 重松清:著 自分の心の声が聞こえるか、そしてそれに耳を塞いでいないか? シゲキヨ大人モチーフ作品の常である、読者に罪悪感のデジャヴを覚えさせる連作SF短編集。 ファンタジーと云うオブラートに包んだセルフマインドルポタージュ(佐々木造語)。 直視したくない現実を見せつけて突き放すだけでなく、最後には必ず救済があるのがシゲラー作品のよいところ。 たましいのデトックス。 (ルミネ横浜店 佐々木章子) |
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カシオペアの丘で 上・下 講談社・各1,575円 |
『カシオペアの丘で 上・下』 重松清:著 重松清の3年ぶりの長編小説です。 感動で所構わず涙しました。 (出店開発室 渡邉浩隆) |
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刀語 1 (全12巻) 講談社・1:1,029円 2〜12:1,155円 |
『刀語』 西尾維新:著 (1・2・3・4・5・6・7・8・9・10・11・12) 洋物ならペリーローダンシリーズ。 和物なら西尾維新の大河小説『刀語』です。 月刊のシリーズ書籍で、お客様と定期的に本屋に来る喜びを共有しました。 そのことが内容にもましてうれしく思えたものです。 月刊の学習と科学(学研の)学年誌の次号を待つ間の楽しみを思い出させられました。 物語も最後の最後で本領発揮のところなど、西尾節健在の1年でした。 熱いもの、激しいもの、重いもの色々ありましたがこの一年とりあえず押えて置かなければいけなかったのは、やっぱり西尾維新の大河小説でしょうか。 (ミーナ津田沼店 安田信之) |
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感傷コンパス 角川書店・1,575円 |
『感傷コンパス』 多島斗志之:著 1955年、過疎地の中学校を舞台にした新卒の先生と生徒の交流の物語。「症例A」の作者がこんな灰谷健次郎的な物語を・・・と思いきや、やはりどことなくミステリアス。文章の贅肉を極限まで削り落とした文体がとにかく素晴らしい。説明過多なカンドー小説では味わうことのできない深く静謐な感動を与えてくれる珠玉の小品です。 (横浜駅西口店 梅原潤一) |
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きみのためのバラ 新潮社・1,365円 |
『きみのためのバラ』 池澤夏樹:著 2007年は池澤夏樹氏の偉大さをあらためて思い知らされた年でした。 中でもこの短編集は、内容から本のたたずまいそのものまで、全てがいとおしく思えました。 最後に収録された表題作を読み終わった瞬間、立ち上がって「ブラァヴォ!」と拍手したほどです。 匠の技が光る1冊。 (アトレ恵比寿店 加藤泉) |
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サクリファイス 新潮社・1,575円 |
『サクリファイス』 近藤史恵:著 大変失礼な話だが「ロードレース」なるものに全く興味のなかった私は只の自転車競走位にしか思ってなかった。 が、ロードレースって奥が深かったのね。 あっと言う間にロードレースの世界に引き込まれてしまった。 過酷で様々な人間模様がありかなり感動。 青春小説でありながら近藤史恵さんの力量でミステリー感覚で最後の最後まで真相が明らかにされず「サクリファイス」の意味がわかった時にまた感動。 読んで損は無い傑作です。 (藤沢店 大嶋慶子) |
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虎の城 上・下 (祥伝社文庫) 祥伝社・各980円 |
『虎の城 上・下』 (祥伝社文庫) 火坂雅志:著 来年の大河ドラマ「天地人」の著者です。 歴史の脇役たちを書くのがうまく文章もとっても読み易いのでお勧めします。 (トレッサ横浜店 竹内晶信) |
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トラや 文藝春秋・1,400円 |
『トラや』 南木佳士:著 猫の愛らしいうしろ姿の表紙が目に止まり手に取った1冊。 南木佳士は地味な印象があり、芥川賞受賞作「ダイヤモンドダスト」以外ほとんど読んでいませんでした。 読み始めたらやっぱり地味でした。 老父の介護、おまけに医師である主人公の心の病の発症。 そして寒さの厳しい信州の描写もあいまって、うつうつとした内容がつづく。 そこへ現れたノラ猫、その母猫に捨てられた子猫のトラが、バラバラになりそうだった主人公一家にかすかな希望の光を灯すことになる。 主人公と一緒に読者も、少しずつ少しずつ気持ちが楽になっていく過程が、厳冬から春に向かう季節のように心地よい。 (伊勢佐木町本店 戸中加代子) |
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とりつくしま 筑摩書房・1,470円 |
『とりつくしま』 東直子:著 「もしも私が鳥だったなら あなたのもとに飛んでいけるのに。」 そんな願いをかなえてくれる「とりつくしま係」。 ただし死後。 風変わりな設定にも関わらず、スッと気持ちに入り込んでくるのは、九十九神という精神が根付く日本人だからかもしれません。 著者が歌人ということもあり、感情抑えめでワビサビ漂う素敵な一冊。 (川崎BE店 倉田裕子) |
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のぼうの城 小学館・1,575円 |
『のぼうの城』 和田竜:著 特に普段時代小説を読まない人たちに読んでほしい。 未読でしたら是非お読みください。 面白いです。 熱くなります。 登場人物のキャラが濃いのでなにげに「腐女子」向きかとも思っています。 「読め! 女子! 時代小説はオッサンだけのものじゃないぞ。」 と本書の前を通る女性を見かけるたびに念じております。 (大和店 直井明子)
どの登場人物も活き活きと描かれていて読んでいて楽しいです。 普段何をやってもダメな”のぼうさま”こと成田長親が誰もが諦めていた戦いに挑む場面などは痛快そのもの。 普段歴史小説をあまり読まない私でも抵抗なく一気に読めました。 そのような方たちにぜひ読んでいただきたい作品です。 歴史小説というより圧倒的なエンターテインメント小説です! (アトレ恵比寿店 鈴木宏昭) |
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ピカルディーの 三度 講談社・1,575円 |
『ピカルディーの三度』 鹿島田真希:著 5つの短編は、「愛」や「文学」に対する私たちが持っている概念への挑戦とも受け取れる、刺激的な小説ばかりだ。 倒錯や異端の愛の形が次々に登場し、読者は逡巡し時には毒を含んだ表現に辟易するかもしれない。 ただ、その毒を自分なりに解毒し、作者のたくらみに対して答えを捜し出すのが、この小説を味わう醍醐味なのだ。 2007年、反私小説の最大の収穫だ。 (販売促進室 中村努) |
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ブラック・ジャック・キッド 新潮社・1,365円 |
『ブラック・ジャック・キッド』 久保寺健彦:著 小学生のアッチョンは、手塚治虫が生んだ漫画の主人公ブラックジャックが大好きです。 両親の離婚、転校先でのいじめ、父親の事業の失敗。 狭い団地の部屋に当たり前のように転がっている目の前の現実は、アッチョンに重くのしかかるように思えました。 でも、ブラックジャックをこよなく愛し、ストーリーをどこまでも覚え、格好まで真似をして、明るくたくましく生きていくのです。 アッチョンにとって、BJは本当のヒーローなのです。 最後にアッチョンが見た奇跡は、著者がこのお話を読む全ての人に贈りたかったメッセージのような気がします。 「現実は変わらなくても、前を向いて生きていけ。」そんな小さな勇気をくれた一冊でした。 (ヨドバシAKIBA店 佐伯敦子) |
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吉原手引草 幻冬舎・1,680円 |
『吉原手引草』 松井今朝子:著 吉原で全盛を誇りながら、突然、姿を消した花魁・葛城。 本書はその葛城について質問させれられた人々の証言集です。 葛城本人は一度も登場せず、質問者の姿も証言者達の人物描写もないです。 でも、この語り方が実に良い!まるで、自分が質問者になって、直接彼らから話を聞いているような気持ちにさせてくれます。 数々の証言の中から浮かび上がる花魁・葛城の姿は、暗闇に咲く一輪の花のように美しく感じられました。 (東戸塚店 柏村靖子) |
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ロック母 講談社・1,365円 |
『ロック母』 角田光代:著 真っ黒な装丁に見事に潔いシルバー文字で“ロック母”。 92年から06年までに書かれた7つの短編集です。”ロック母”は、「ロックンローラーのカッコイイお母さんの話!?」と思いきや、島でひきこもり状態になり、毎日大音量でニルヴァーナを聞きながら何故か和人形を作る母と、その母から逃げるようにして毎日帰りが遅い父、そして久々に臨月のお腹で島に里帰りした主人公のわたしの話です。 短編ながら長編小説を読んでいるような気分になり、この先の家族の行方が気になって仕方ありません。 『八日目の蝉』と同様、「さすがは角田光代!」と叫びたくなる1冊です。 (厚木店 菅野貴子) |
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ワーキング ホリデー 文藝春秋・1,550円 |
『ワーキングホリデー』 坂木司:著 リヤカーで荷物を配達する(なんてエコなんでしょう!)主人公。 この人が元ヤンで元ホストという今までとはちょっと違うキャラクター。 そんなヤマトの前に突然現れた息子と名乗る少年ススム君。 この子がしっかり者でとってもカワイイ…。 そんな2人がとまどい、テレながらも段々親子らしくなっていく姿が、とっても微笑ましく、読んでいてニヤニヤしちゃいます。 (厚木店 岩堀華江) |
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※価格は全て5%税込です。 文・読書推進委員 加藤泉
構成・宣伝担当 矢島真理子 |
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