初エッセイ集『生きるコント』
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加藤: |
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ここからはエリーさんの初エッセイ集『生きるコント』についてお伺いします。
しょっぱなから、リオのカーニバルの中をビキニ姿で駆け回っていたりして、すごい女の人だ〜と思いました。
私が大爆笑したのは与論島で台風に遭った時のエッセイです。
ひょっとしてエリーさん、怖いもの知らずですか?
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『生きるコント』
文藝春秋 刊
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大宮: |
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そうっすね。 そういうことになるけど、本当はすごく気が小さいし、びびりなんですけど、バカだから、こうなるとこうなる、っていう風に先を推測できないんです。 で、ただの思いつきと気持ちだけで飛び込んでいくというか。
あと、取り柄があまりなくて、唯一の取り柄が、勇気、だと思ってまして。 |
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なんかいろいろと巻き込まれがちなんで、人がそれをみて、笑ってくれればいいな、と思ってます。 たとえば、運転免許も持ってないのに、仕事したひとから、ピンクのポルシェを譲るっていわれて。 誰か適当な人はいないのかって聞いたら、このクルマを欲しがる人はいるけど、似合わない。 クルマが人を選ぶのであって人がクルマを選ぶんじゃないんだ、君は選ばれた。 なんて言われると、もう、受けて立つ、って思って。 免許ないんで、意味なく事務所の駐車場に置いてあるんですが。 お金の事とか、そんな無駄な事していいのか怖かったけど、まあ、もらっちゃいました。 回りは馬鹿だと言ってますが、みんな面白がってくれるのでよかったです。
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加藤: |
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何か事件に巻き込まれた時でも、これはネタになるな、と考えたりしますか(笑)?
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大宮: |
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そう思うようにしてます。 言い聞かせて落ち着かせるというか。
初めてのハワイでいきなり大地震がきたときも、パニックになりそうでしたが、これはネタになるぞってモチベーションを高く持ちました(笑)。
いじめられたりしても、面白いっ!って、笑いだと思うようにしました。
そういうテクニックがあると生きていきやすいからおすすめです!
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加藤: |
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このエッセイ集は週刊文春で連載されたものをまとめたものですが、週刊文春で連載を持ったきっかけは?
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大宮: |
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連載をまとめたんじゃなくて、書き直してるんです(笑)。 初めての本だし。
加筆修正する!って言い出して、途中で大変だったから後悔したけどよかったなって思ってます。
連載を持ったきっかけは、もともと小説を書きませんかっていう話だったと思いますが、小説より連載をやりたいなあって相談した事がきっかけです。
いろいろ巻き込まれて、そのエピソード自体が、落語っぽいと言われるんです。
みんなよく「エリー、あのビキニの話、してあげて!」ってリクエストするんです。
そのたび、話すのですが、面倒くさくなってきて、ああ、連載で本にでもなれば話さなくて済むのにと(笑) 省エネしたいからはじまった連載です。
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舞台『GOD DOCTOR』
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加藤: |
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5月から“演劇大宮エリー 第一回公演『GOD DOCTOR』”の公演が始まりました。
拝見しましたが、かなり面白かったです!
キャストが豪華ですが、皆さん、エリーさんのお知り合いだったのですか?
すごく楽しそうに演じているのが伝わってきましたが…。
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大宮: |
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わーーい!わーーい!ほんとですかぁ?! ありがとうございまーす!
うれしいなあ。 よかった。 ほっ。
キャストが楽しそうっていうのも、伝わってうれしいなあ。
そうなんです、今回、わたし、はじめての演劇挑戦でしたし、これからも続けていきたいという本気の気持ちでしたので、わたしがよく知っていたり、ご縁があったりする役者さんにお願いしたいんです。 だから信頼関係の上になりたった舞台で。
で、稽古前に目標は?って聞かれたときに「みんなで最後に温泉にいこうって言い出すぐらい、みんなが仲良くなること」って言ったんです。
わたしとのつながりだったから、役者さん同士は初対面のかたも初共演のかたも多く。 でも、すごく仲良くなって。 それが舞台にきちんと出てたと思います。
ええ、もちろん。 温泉!いってきましたよ!
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加藤: |
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人間界と神の世界のあいだの「はざま」の世界で、「God Doctor」を目指す5人の研修医がそれぞれの得意分野を活かして不幸な人間を幸せにする治療を行う、というお話です。
第一部はとにかく笑いの連続でしたが、第二部はうってかわって胸を打つメッセージ性があると思います。
この、ユーモアとシリアスの落差は『生きるコント』を読んでいても感じました。
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大宮: |
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うわっっ!ほんと? すごいな加藤さん。
そうなんです。 「生きるコント」もそうなんです。 同じテーマでやってるんです。
全然違うようにみえた。 すごいなあ、分かりましたか!
テーマは「しあわせと欠落について」。
演劇もね、この生きるコントも。
自分のコンプレックスがいいなって思うようになれたり、自分に嫌いなところが愛おしく好きになったり、勇気が出たり、元気になったりして欲しい。 それをゴールに作っていて。
「生きるコント」は、笑える! 電車の中で読むのは危険! 吹く!って言われるんですけど、でも、元気がないときに読んだらすごく温かい気持ちになれて少し泣いちゃいました、って言われたりもするんです。
そう、泣ける本!なのだ!(らしい)
わたしはいじめられっこだったりするし、どこにも所属できない孤独感や世間に対する違和感を抱えて生きてきて、その切なさが、笑いになっているのですが。
だから、ひとつひとつが、ヘンテコな小咄なんですが、その根底に、しあわせへのきっかけ、があるようにエピソードを選んで書いています。
おかんに犬を飼いたいといったら、嫌だと言われ、「そんなに言うんだったら、おかんが犬になったる!」と言われ、おかんが手をつき、犬のポーズでわんわん、と言い、こたつの回りをまわりはじめたときは、唖然としました。
もちろん、これは面白い話かもしれないけど同時に切ないんですね。
この、分かり合えない残念な感じというか。 親なのに。
まあ、いろいろみんな抱えてるとは思うけど、それはあんただけじゃないぜ、ってのが共有できるだけで、ひとはちょっとラクになると思うんです。
そんな気持ちで書いた本です。
どうぞ、1ページでも読んでみてもらえたら。
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加藤: |
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そうですね。 1人でも多くの方に読んでほしい本だと、一読者として私も思いました。
演劇のほうですが、第二回の公演の予定などがおありでしたら教えてください!
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大宮: |
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アンケートにね、しあわせになった! とか精神的に障害があるんだけどすごく励まされた、とかいう声が多くて。 あと、再演してほしいって。
それからキャストの間でもどこからともなく、再演しようぜ、みたいな声がでてきて。
再演、しよう、しよう、と盛り上がっています。
初日を迎える前に、完売しちゃったから、見れない人が多かったんですよ。
だから、再演しないといけないねって。
まあキャストとわたしたちだけなんですけどね、まだ。 約束したのは。
再演とは別に、第二回の演劇は、ミュージカルをやろうと思っています。 まだぼんやりなんですけど。
漠然と、でも強く、そう思っています。
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加藤: |
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ミュージカルですか! それはまた面白そうですね!!
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