日本ホラー小説大賞受賞作『庵堂三兄弟の聖職』
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加藤: |
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次に、日本ホラー小説大賞受賞作『庵堂三兄弟の聖職』について伺います。
死体から箸や櫛や石鹸などの生活用品を作り出す遺体加工業を営む兄弟の話ですが、この「遺工師」のアイディアはどこから生まれたのでしょう?
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『庵堂三兄弟の聖職』
角川書店 刊
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真藤: |
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葬送の形には火葬や土葬だけじゃなく、樹木葬とか鳥葬とか様々なものがあって、そこから“遺工葬”と言う架空の葬送形態を思いつきました。
この“遺工葬”でその職人や遺族の関係性を描いて、「弔い小説」のようなものを書けないかと思ったのがスタートです。
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加藤: |
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発想の面白さだけでなく、とても心温まる(!)家族小説だと思います。
真藤さんの手にかかると、家族小説がこういう形になるのか〜、と感心してしまいました。
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真藤: |
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庵堂三兄弟は僕の作品のなかで、最も人物を掘り下げることができた現時点でのベストです。 一度舞台をセッティングしたら、三兄弟がそれぞれ勝手に躍動してくれる感覚があって、執筆中ことあるごとに、ほ〜そんなこというか〜、と僕も感心していました。
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加藤: |
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この作品は最初からホラー小説大賞に応募なさろうと思っていたのですか?
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真藤: |
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最初はもっとグロな展開も構想していたのですが、こいつらのやってることは“供養”であり“弔い”であり、それぞれが怪物的な心性を解き放つような展開へとおのずと転がっていきました。 誰しもにつきまとう、狂気とか偏向した感情を抱擁できるような、日常化したホラー的環境のなかでそのさきを窺えるような、そんな小説にしたかった。
三兄弟ともに、闇から必死で光の方向にもがき出ようとしていて、これもやっぱり僕も一緒に足掻いていたと思います。
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加藤: |
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真藤さんは映画のお仕事をされていたそうですが、『庵堂三兄弟』の映像化の話がきたらどうされますか?
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真藤: |
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解体される死体役でカメオ出演。
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