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第64回 2008年12月18日
●執筆者紹介●
 
加藤泉
有隣堂 読書推進委員。
仕事をしていない時はほぼ本を読んでいる尼僧のような生活を送っている。

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〜読書推進委員が選んだ2008ベストワン〜
 
【書名五十音順】
 

 
 
悼む人・表紙画像

悼む人


文藝春秋
1,700円
(5%税込)
   天童荒太 『悼む人』 (文藝春秋)

人々の死を悼んで旅をする人の物語。 彼は何のために旅をするのか?との疑問への答えを探しつつ読み進むことになるのだが、それは同時に、我々は命に軽重をつけてはいないか?死を悼むとは?そもそも死とは?といった根源的な問いを突き付けられることになる。
「永遠の仔」「家族狩り」と同様、読み進めるには気力・体力を使うが、静謐さを伴いながら淡々と綴られる主人公・静人の「悼みの旅」の目的を読者なりに解釈できた時には、そこに救いの光を感じることができるかもしれない。
7年間、本作に真摯に対峙してきたという著者に最大の敬意を表しつつ、是非ご一読頂きたい。

(管理本部 松信健太郎)

 
決壊 上・表紙画像
決壊 下

新潮社
各1,890円
(5%税込)
   平野啓一郎 『決壊 上』 (新潮社)

殺人事件を中心に、現代社会の抱える問題を折り込んだ純文学であり大作ミステリー。
様々な事件が起こるたびにこの本を思い出し、改めて「幸せ」とは何かを考えさせられました。
上下二冊のボリュームも気にせず、先に進まずにはいられない今年一の「徹夜本」でした。

(川崎BE店 小林あゆみ)

 
出星前夜・表紙画像

出星前夜


小学館
2,100円
(5%税込)
   飯嶋和一 『出星前夜』 (小学館)

島原の乱を描いた541ページの長編小説です。
島原の乱が勃発した背景が子細に描かれていて、歴史を知るとはこういうことなのだ−!とトンカチで頭を殴られたような衝撃を受けました。
現在、不況の真っ只中、大変な思いをされている方も多いと思いますが、この本の中の世界に比べたら自分はまだ大丈夫と感じられると思います。
今年読んだ中で、最も血が熱くなった1冊です。

(アトレ恵比寿店 加藤泉)


父が子に語る日本史・表紙画像

父が子に語る
日本史


トランスビュー
1,575円
(5%税込)
   小島毅 『父が子に語る日本史』 (トランスビュー)

小島毅、要チェックです。 歴史(学者)の本でありながら、著者の他の作品も読みたくなるような、サービス精神に溢れた語りっぷりです。 なにせ脱線具合が愉しく、しかもタメになる。 読み進めるうちに、あなたの日本史像はかなり変わるのでは。

(アトレ目黒店 梅田勝)


 
戸村飯店青春100連発・表紙画像

戸村飯店
青春100連発


理論社
1,575円
(5%税込)
   瀬尾まいこ 『戸村飯店青春100連発』 (理論社)

兄ヘイスケ、弟コウスケ。 大阪の下町にある中華屋、戸村飯店の息子たち。
容姿も性格も真逆なふたり。 共通点は、どちらも青春まっ只中ということだ。
児童書が得意な出版社から出ていることもあって、語り口はノリがよく、読みやすい。 どっこい、テーマはものすごく深くて、人間の根本的な部分に触れている。 紐解けば聖書にまで遡る「兄弟」というものの複雑さを、それぞれの親、友人、恋人とのやりとりを織り交ぜながら、大阪と東京という土壌の違いを対比させながら、鮮やかにあぶり出していく。 そして、故郷から出て行くこと、帰ることの意味を問いかける。 やさしい顔してなかなか硬派な1冊でした。

(八王子店 吉澤みどり)


ばかもの・表紙画像

ばかもの


新潮社
1,365円
(5%税込)
   絲山秋子 『ばかもの』 (新潮社)

イギリスのロックグループ「YES」のアルバムに「フラジャイル」といタイトルがある。 「ばかもの」はこの”こわれもの”としての人間を、行間深く描ききった今年下半期の収穫だ。 傷つきやすく孤独で不器用にしか生きることができない男と女の、おもしろうてやがてかなしき物語。 作中「ばかもの」という言葉は2回登場するが、それは心に響く愛の言葉でもある。

(店舗事業本部企画担当 中村努)

 
夜の光・表紙画像

夜の光


新潮社
1,680円
(5%税込)
   坂木司 『夜の光』 (新潮社)

本当の自分を隠し周囲の人々と密かに戦う“スパイ”であるということで深く繋がっている彼(女)たち。
夜空を見上げ共に戦っている仲間を想う、それだけで強くなれる。 そしてまた戦い続ける。 そんな4人の強くひたむきな姿に心が揺さぶられます。 痛いです。
より多くの人に彼(女)らの戦い、想いを感じて欲しいです。
今回の坂木司は一味も二味も違います。

(厚木店 岩堀華江)


  文・有隣堂 読書推進委員

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