吉川英治文学新人賞 『田村はまだか』
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加藤: |
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遅ればせながら、吉川英治文学新人賞受賞、おめでとうございます!もう何度も聞かれていると思いますが、受賞が決まった時のお気持ちは?
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『田村はまだか』
光文社 刊
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朝倉: |
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ありがとうございます。 ひたすら嬉しかったです。
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加藤: |
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この作品は雑誌「小説宝石」に連載されていましたが、連載時の思い出深いエピソードなどお聞かせ願えますか?
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朝倉: |
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坊主頭の担当編集者に声をかけてもらって、初めてお会いしたとき、わたしはあまりよい状態ではなかったんです。 でも「ぼくたちは同じ船に乗っているんですよ」という坊主頭の言葉にたいへん励まされて、というか、まんまとやられて、かなり元気よく書くことができたという。
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加藤: |
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札幌はススキノのバーで、小学校の同窓会を終えた40歳の男女5人が「田村」の到着を待っているという設定の連作長編です。 最初から長編化するおつもりで書き始められたのですか?
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朝倉: |
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「連作というかたちで、50枚を6本」という注文をいただいたときから、あんなふうにしようと思いました。
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加藤: |
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人生の折り返し地点に差し掛かった5人。 それぞれ重い荷物を背負って生きているわけですが、彼らが待っている「田村」の存在に、朝倉さんはどのような思いを込められたのでしょうか?
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朝倉: |
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本文にも書いたような気がするのですが、まじりけのない気持ち、だと思います。 もともとは「ここにいない誰かを待つ」小説を書きたいと思って書き始めたんです。 書いていくうちに、5人はどうして田村を待っているんだろう、と考えました。
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加藤: |
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なるほど。 『田村はまだか』を読みながら、なんだかすごく羨ましいような、切ないような気持ちになったのですが、自分が感じ取っていたのはこの「まじりけのない気持ち」だったのだ、とよく分かりました。
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