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第78回 2009年7月23日 |
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〜有隣堂スタッフが選んだ2009上半期ベストワン!〜 | |||||||||
早いもので今年も残すところ半年弱。 今回は、今年の上半期に出版された本の中から有隣堂スタッフの有志がそれぞれベストワンを選びました。 読み忘れている本はないでしょうか? 夏休みの機会に是非手にとってみてください! (書名五十音順) |
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忌野清志郎 1951-2009 ロッキング・オン 1,050円 (5%税込) |
『忌野清志郎 1951-2009』 ロッキング・オン まずは表紙にやられた。 掲載写真がどれもイー!(ミック・ジャガーとのツーショットには驚いた) これまでのインタビュー選なので、ほとんど再読だったが、あらためて感じるのは、キヨシローのオリジネーターぶり(特に言葉)とユーモアである。 渋谷陽一とのやりとりには何度も笑わせられた。 そして何よりもこの本には、おそらく葬儀後初の仲井戸麗市インタビューが掲載されている。 そのあまりに素直な語りぶりに読んでいるうちに咽の奥が熱くなってきた。 チャボと渋谷と一緒にキヨシローを悼んでいるのに気づく。 本当の追悼号である。 (アトレ目黒店・梅田勝)
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運命の人 (画像は第1巻) 文藝春秋 各1,600円 (5%税込) |
山崎豊子 『運命の人』(全4巻) 文藝春秋 沖縄返還に関する国家機密漏洩を題材として、国家権力とは何か、ジャーナリズムとは何か、戦後史を問うスケールの大きい作品です。 国家を揺るがす大スクープを掴んだ主人公の記者が、挫折して何もかも失ったあと、多くの出会いのなかで「いちばんたいせつなもの」を見つけていく物語は、感動そのものです。 「次はどうなってしまうの」という絶妙な巻末は、全4冊をイッキ読みさせてしまう可能性ありなので、ご注意を! (横浜駅西口店・佐藤宏) |
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学問 新潮社 1,575円 (5%税込) |
山田詠美 『学問』 新潮社 時代はインターネットも携帯電話もない60年代から70年代。 静岡の地方都市を舞台にした4人の子どもたちの成長物語だが、人間が生きていくことの喜びや悲しみが実に鮮やかにリアルに描かれている。 文章は平易にして深遠。 人物描写は洒脱にして重厚。 地の文と方言を駆使した会話の絶妙なバランス。 そして、4人の新聞の死亡記事を挟んだ巧みな構成。 どれをとっても一級品だ。 人間のさまざまな欲望を肯定しながらも、死に至るまでの人間を見つめる作者の眼差しは、優しく恐い。 それにしても「学問」というタイトルはなんと逆説的だろう。 (店舗事業本部・中村努)
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風の中のマリア 講談社 1,575円 (5%税込) |
百田尚樹 『風の中のマリア』 講談社 生まれながらにして戦士として強く逞しくそして美しく生き抜くマリア。 守るべき物は王国と次の世代。 オオスズメバチの短くもちょっと切なく感動的な一生を描いたかつて例を見ない大作です。 闘いのシーンなど非常にリアルで途中で本を置くことが出来ません!! こんな風にただひたすらに生きることにすべてをかけてみたいものです。 最後に…問いたい。 百田さん、あなたの前世は蜂ですか? (川崎BE店・大嶋慶子)
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きのうの神さま ポプラ社 1,470円 (5%税込) |
西川美和 『きのうの神さま』 ポプラ社 本著を読み始めてすぐに、登場する人物とその周り人の心の機微がひとつひとつ浮きあがってくるような感覚につつまれ、努めてゆっくり読み進めた。 医師という仕事、僻地医療、老い、など社会的問題を捉えていながらも、感じ取れるのは、そこに息づく人間の心の風景である。 日常への倦怠、孤独家族間の確執などが露わになっても、それでいい、それでも生きていく、という爽快さが残る。 (店舗支援室・田中京子)
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くまちゃん 新潮社 1,575円 (5%税込) |
角田光代 『くまちゃん』 新潮社 可愛いタイトルと表紙に惑わされるなかれ! カルい気持ちで読むとヤケドする! “前の話で人を振った人が次の話で振られる”という体裁の連作恋愛小説集なのですがどの話も深くてイタくて切なくて堪らない気持ちになります! 特にラスト二編で涙腺は大爆発必至です。 現在「恋が足りない」と思っている人必読! 恋してる最中の人は心に刺さり過ぎるので取り扱い注意!の1冊。 角田光代はホントーに凄い! もう1回直木賞獲ってもいい位スゴイ! (横浜駅西口店・梅原潤一)
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智天使の不思議 光文社 1,995円 (5%税込) |
二階堂黎人 『智天使(ケルビム)の不思議』 光文社 新本格の保守本流、二階堂氏の仕事といえば、昭和40年代にその名を轟かす名探偵二階堂蘭子の記述と、表題に挙げた現在活躍中の変人課長代理、水乃サトルの名推理の物語があります。 旧華族の没落を描くこの物語は、まさしく氏の手腕が存分に発揮されている魅力的な一冊です。 全ての殺人事件の中心に“彼女”が存在する。 全てを秘して完璧に笑う女が創り出した鉄壁なるアリバイの前に、我々はただ呆然とするしかない。 (横浜駅西口店・広沢友樹)
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恋文の技術 ポプラ社 1,575円 (5%税込) |
森見登美彦 『恋文の技術』 ポプラ社 拝啓、森見登美彦さま。 いつもあなたの新刊を楽しみにしています。 今回の「恋文の技術」も、阿呆で不器用でモテない男子学生の主人公に、最後の最後までゲラゲラ笑いが止まりませんでした。 私もいつか文通武者修行の旅に出て、恋文の達人を目指したいと真剣に思っています。 メールよりもやはり手紙ですよね!! モリミーさま、あなたの書く小説と“パンツ総番長”が私は大好きです! 敬具
(藤沢店・菅野貴子)
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このあいだ東京でね 新潮社 1,680円 (5%税込) |
青木淳悟 『このあいだ東京でね』 新潮社 人知れず咲く一輪の花のたとえもあるように、風景とは本来それを観察する者の有無に関係なく、ただそこに在るものです。 本作では登場人物が一切登場しないまま、ありふれた風景描写ないしは一般的な事実のみが、ストーリーの展開を拒むように脱線しながら淡々と綴られていきます。 「風景をみたかったらストリートビュー機能があるじゃない」 そんな時代にビル間からの含み笑いを。 三島賞候補の表題作を含む8篇のスケッチ。 (伊勢佐木町本店・古畠徹生)
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櫻川イワンの恋 文藝春秋 1,680円 (5%税込) |
三田完 『櫻川イワンの恋』 文藝春秋 芸能界や花柳界に実在した人物たちをモデルに描いた、江戸情緒溢れる短編集です。 —“こんちくしょう。 お前さんのせいで息継ぎ間違えちまったんじゃねえか。” こんな粋なセリフがぽんぽん飛び出す“こんちくしょう!”な1冊。 三田完ほど人を酔わせる文章を書く作家はいないと思います。 落語好きは「親父橋」必読ですぜ。 (アトレ恵比寿店・加藤泉)
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蛇衆 集英社 1,575円 (5%税込) |
矢野隆 『蛇衆』 集英社 とんでもなく強い!強すぎる!「蛇衆」という6人の「荒喰」が、襲いくる武者たちをまるで舞を舞うかの如くなぎ倒してゆく! そんな化物じみた奴らのくせして、物凄く人間臭かったりするところもまた魅力的で、様々に渦巻く感情に揺り動かされる「蛇衆」たちの姿が読者の心を掴んで放さない。 宮部みゆき氏が絶賛したのも納得の、秀逸な作品です。 是非、一読あれ!! (横浜駅西口店・佐藤正博)
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たまさか人形堂物語 文藝春秋 1,500円 (5%税込) |
津原泰水 『たまさか人形堂物語』 文藝春秋 日常ミステリーって言ってしまうと最近よくありがちですが、これはちょっと違う。 明るくないし、素人名探偵も出てこない。 感情表現が抑えられていて、さらっと読めばそれで物足りなく感じつつも終わってしまう。 でもでもでも! 想像力をえいっと発揮すると、実にウェットに心に響いてくるんです。 読むたびにそのひとつひとつの言葉や行間から想像する世界は変わり、新しい作品になる、そんな1冊でした。 最近の日常ミステリーに飽きてきた方にオススメです! (ヨドバシAKIBA店・関口実幸)
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猫を抱いて象と泳ぐ 文藝春秋 1,780円 (5%税込) |
小川洋子 『猫を抱いて象と泳ぐ』 文藝春秋 チェスを題材に、小川洋子さんによって、静かに、美しく、そして繊細に紡がれたこの物語は、全ての登場人物がそれぞれに愛おしい。 自分が生きるべき場所で淡々と生き、自分が愛すべき人を優しく愛し続ける登場人物達の切なくも高潔な生き方は、読み手に上質な感動を与える。 少しだけ悲しいラストを読み終え、もう一度表紙を見れば、主人公の泳いだ海と生きた証がそこにある。 電車の中などではなく、心落ち着く静かな場所で読んで頂きたい一冊である。 (管理本部・松信健太郎)
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パラドックス13 毎日新聞社 1,785円 (5%税込) |
東野圭吾 『パラドックス13』 毎日新聞社 ズバリ!今年一番、物語世界に引き込まれてしまった作品です。 ページを繰る手が止まらず、ほぼ一気読みでした。 ただのSF小説だと、あなどるなかれ。 この物語の世界では、いたるところで、私達が、当たり前だ、と考えていることが覆されていく。 「人間」「生命」「世界の創造」「絶望」そして「希望」—。 主人公とともに、ぜひこの世界を歩いてみてください! そしてその旅路の最後、きっとあなたの中に「何か」が残るはず! (ルミネ横浜店・佐藤紀子)
人が忽然と消えてしまった世界というのは、いったいどういうことなのか。 この世界で生き抜こうと、人類繁栄の考えを主張する者と、この世界から逃れる方法を見つけ、自殺を選ぶ者たち、その究極の選択と、その後の世界…。 この作品は、映像化しないと勿体無いと思うので、いつか映像化して欲しいですね。 (書籍外商部・矢部久美子)
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ブラザーサン・ シスタームーン 河出書房新社 1,470円 (5%税込) |
恩田陸 『ブラザーサン・シスタームーン』 河出書房新社 学生時代に仲良し3人組だった男女、でも今はもう会うこともない3人がそれぞれ、ふとしたきっかけで昔のことを思い起こします。 展開がシンプルな分、恩田さん独特の微妙な心理描写がより際立ち、私は第一部の語り手である綾音にとても共感しながら読みました。 繋がっているけど繋がっていない(この表現は読んだ方はピンとくるはず)、そんな3人の話です。 よく「学生時代は良かった。 あの頃に戻りたい。 」って言うけれど、自分はそんなのまっぴら御免だ!と思っている方はぜひ読んでみてください。 そしてBGMにはBlankey Jet Cityの『青い花』を。 (厚木店・岩堀華江)
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プリンセス・トヨトミ 文藝春秋 1,650円 (5%税込) |
万城目学 『プリンセス・トヨトミ』 文藝春秋 直木賞選考で非常に悪評でしたが、そんなものは関係ないんです!! 荒唐無稽・男だけしか知らない(嘘?)・ミラクル、いいじゃないですか!! 万城目ワールドにはまった人は、二度と抜け出せません。 僕はいままであまり関西系ってコテコテのイメージがあって好きではなかったのですが(関西の人、ごめんなさい!!)、 こんな大阪だったら僕も仲間にしていただきたい!!(ってなれませんが・・・・) (藤沢店・二見太二)
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用もないのに 文藝春秋 1,260円 (5%税込) |
奥田英朗 『用もないのに』 文藝春秋 奥田英朗は小説より随筆のほうが断然面白い。 なんて言っちゃっていいのかな。 でも、これ本当だよ。 この作家が野球好きなのはすでにご存知かもしれないが、北京オリンピックの星野JAPANを応援に行って、再び「てめーら、泳いで帰れ」と言ってしまう憤激の一部始終と圧巻は「おやじフジロックに行く」。 出版社カワイ子ちゃん連中を引き連れて、3泊4日の苗場フジロックで踊りまくるなんて、うらやましい。 フジロックって結構なおやじロックンローラーが出演してるんだね。 このおやじも行くぞおー、フジロックへ。 (厚木店・佐藤孝)
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山田商店街 幻冬舎 1,365円 (5%税込) |
山田マチ 『山田商店街』 幻冬舎 架空の町の商店街(いや、山田さんの頭の中にある商店街なのですが)のお店はどこもかしこもナンカ変。 その変なところに私はハマってしまいました。 一度ハマると抜け出すのが結構大変です。 社会や常識で凝り固まっている脳みそを、ゆるめるのに持ってこいです。 長くても10ページくらいの話なので、物は試しに読んでみてください。 (ルミネ横浜店・富澤明子)
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るり姉 双葉社 1,680円 (5%税込) |
椰月美智子 『るり姉』 双葉社 家族みんなが大好きな”るり姉”。 それぞれが、それぞれの言葉でたんたんと語られてゆく物語にぐいぐいと引き込まれてしまいました。 くっつきすぎず、でもとても親密。 そして、信じられないくらいつらくても悲しくても、奇跡は起きるんだ、と思えるラストが最高です。 (伊勢佐木町本店・高谷久美子)
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六月の夜と 昼のあわいに 朝日新聞出版 1,575円 (5%税込) |
恩田陸 『六月の夜と昼のあわいに』 朝日新聞出版 10の短編とそれぞれに添えられた詩・絵画のコラボレーション。 いわゆる読み応えのある作品ではありません。 何かを強く訴えるテーマがあるわけでもありません。 むしろ柔らかい音楽に近い、「小」説です。 にも関わらず、確かな手触りがあるのは、イメージ或いは夢といったものが、その対照にある現実の多様な断片から生まれる記憶なのだと認識させられるためではないでしょうか。 人は皆、本書の一篇【約束の地】の挿絵に描かれた、ひっそりと暗い丘に立つ存在なのかもしれません。 実感のないあわい世界だからこそ、いまここにある情景を静かに胸に留めたいものです。 (出店開発室・東慶太)
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ROCK'N'ROLL SWINDLE 角川書店 2,100円 (5%税込) |
嶽本野ばら 『ROCK'N'ROLL SWINDLE』 角川書店 作家・嶽本野ばらの本音がこれでもかと炸裂します(途中で起こしてしまった例の事件を含む)。 そして何より個性あふれるバンドのメンバーが凄すぎるのです。 特に約一名がメチャクチャを通り越してなんていうのでしょうか、これでもプロのミュージシャンなのでしょうか(笑)。 とにかくメチャクチャで読んでいて何度も笑ってしまいました。 そして、これは本当にノンフィクションなのでしょうか? (あ、「フィクションも、多少まざっています」って書かれていますね。 …多少?? 笑)。 (小田原ラスカ店・佐藤真)
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わくらば追慕抄 角川書店 1,785円 (5%税込) |
朱川湊人 『わくらば追慕抄』 角川書店 あの名作『わくらば日記』の続編がとうとう刊行!ということで、大切に大切に読ませていただきました! 不思議な力を持つ美少女鈴音とその妹のワッコちゃんが大活躍する昭和の事件簿。 平成生まれには、わかるめえ、この昭和の匂いがぷんぷんする懐かしいノスタルジックな物語。 ミステリーのようでミステリーでなく、ホラーのようでホラーでない、現代のストーリーテーラーとしてその才能をあますところなく発揮した朱川ファンタジーの決定版! 今回は、「薔薇姫」と呼ばれる謎の女、御堂深雪も登場。 まだ続くというので、次回が更に楽しみな一冊ではありますが、パワーはアップするばかりの“わくらば”、ご家族でお楽しみください。 (ルミネ横浜店・佐伯敦子)
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