※2014/2/28以前の「本の泉」は、5%税込の商品価格を表示しています。 |
第10回 2006年9月21日 |
|
背中を押してくれる"あの頃小説"
リターンズ |
|
||||||||||||
早いもので、この「本の泉」も連載10回目。 第1回のテーマが「背中を押してくれる"あの頃小説"」だったことを覚えておいでだろうか? 今回はもう一度初心に返る意味もこめて、最近おすすめの"あの頃小説"をご紹介しようと思う。 まず初めに、香坂直『トモ、ぼくは元気です』。 この本は、できれば小学6年生の夏休みに読みたかった! 主人公は、障がい児の兄を持つ小学6年生の和樹。 兄の面倒を見ることに疲れた和樹は家庭で問題を起こし、夏休みいっぱいを大阪の祖父母の家で過ごすことになる。 そこはコテコテの下町商店街。 その商店街で催される、「伝統の一戦」なる隣町商店街との金魚すくい対決に、和樹は出場することになる…。 底抜けに明るく善意のある人々に囲まれて、しだいに成長していく和樹の姿が本当にすがすがしいが、障がい児のきょうだいがいる少年少女の鬱憤や悩みも、本書からはとてもよく伝わってくる。 障がい者は人々に優しい気持ちを思い出させるために神様が用意した存在と、以前何かの本で読んだことがあるが、それに倣えば、人々に優しい気持ちを思い出させるためにこの本は書かれたのかもしれない。 著者は昨年『走れ、セナ!』でデビューし、本書がデビュー2作目となる。 これからもずっと読み続けていきたい作家がまた登場した。 次に、佐藤多佳子『一瞬の風になれ 第1部 (イチニツイテ)』。 本書は3巻もので、1ヶ月に1巻ずつ刊行され、3ヶ月で完結する予定になっている。 本当は最終巻を読んでからご紹介するべきなのだろうが、それまで待ちきれないので今回ご紹介してしまおう。 『バッテリー※』(あさのあつこ 著)や『DIVE※』(森絵都 著)に連なる青春スポーツ小説の名作になること間違いなし! 春野代高校に入学した主人公の新二は、中学までやっていたサッカーを止めて、幼馴染の連と一緒に陸上部に入ることにする。 天才的なMFの兄と比べられることにうんざりしたからだ。 結局、陸上部でも天才スプリンターともてはやされる連との実力の差を思い知らされるのだが、新二は次第に陸上の魅力にとりつかれていく。 本書の読みどころは、何と言ってもリレーの場面。
こういった部分を読んでいると、う〜ん、青春っていいねぇ!と思わず身悶えてしまう。 文・読書推進委員 加藤泉 構成・宣伝課 矢島真理子 |
|
前の回へ |