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第19回 2007年2月8日 |
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これから旬の女性作家たち
Part 2 |
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第13回で、「これから旬の女性作家たち」をご紹介させていただいたが、あれから4ヶ月、大ブレイクの予感がする作家たちが続々と登場して仕方ないので、もう一度、このテーマで作品をご紹介しようと思う。 まず初めに、桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』。 2007年が始まってからまだ1ヶ月しか経っていないのにこのようなことを言うのは勇気がいるのだが、今年のベストワンと言っても過言ではない1冊(奥付は2006年12月)。 いささか仰々しさを感じさせる桜庭一樹の文体が、この小説では実に上手く作用していて、この小説を書くためにこの作家は生まれてきたのではないかと思うほどだ。 舞台は鳥取県西部の村。 特に強烈なのは、「鉄の女」赤朽葉毛毬だ。
伊藤麻衣子主演のドラマ「不良少女と呼ばれて」(高部知子主演の「積木くずし」でも可)を毎週欠かさず見ていた方には、たまらない懐かしさを感じさせるキャラクターだろう。
とにかくこの本は、寝食忘れて夢中になるほど読んだ。
私の周りでこの本を読んだ人たちも、口を極めて褒め称えている。 3年に一度出るか出ないかのレベルの傑作。 次に、日向蓬『匂いの記憶』。 去年、『SWEET BLUE AGE』という青春小説集が出版されたが、今思えばこの本はとても贅沢な短編集で、森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」や、有川浩の「クジラの彼」や、桜庭一樹の「辻斬りのように」や、そのほかにも角田光代や三羽省吾、坂木司といった作家の短編が収録されている。 この豪華短編集の中で私が最も惹かれたのは、それまで読んだことのなかった日向蓬という作家の「涙の匂い」という短編だった。 東北の田舎に転向した中学生の女子の初恋が描かれているのだが、溢れ出る思いをせき止めようとする息苦しさや、何かを諦めようとするときの鈍い胸の痛みがじんわりと伝わってくる名短編だ。
最後に、辻村深月『スロウハイツの神様 (上・下)』。 世間に認められ始めた若手女流脚本家が所有する「スロウハイツ」というアパート。 そこに暮らすのは、彼女の友人であるクリエイターの卵たちと、大人気小説家のチヨダ・コーキ。 さながら、手塚治虫の住んでいた「トキワ荘」の様相。 何者かにならんとする若者たち1人1人の真摯な気持ちが、ひしひしと行間から伝わってくる。 トキワ荘と違うのは、住人達の間の恋愛模様が重要な要素を占めている点で、それに関しては、ところどころにちょっとしたサプライズも用意されている。
ちなみに、描写がとても映像的で、醸し出す雰囲気は、「ハチミツとクローバー」のそれに似ているので、ハチクロ好きの方には特におすすめしたい。 文・読書推進委員 加藤泉 構成・宣伝課 矢島真理子 |
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