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有鄰


平成14年5月10日  第414号  P3

 目次
P1 P2 P3 ○座談会 横浜港大さん橋 (1) (2) (3)
P4 ○横浜・野毛−大道芸人がやって来る街  森直実
P5 ○人と作品  阿川佐和子と『いい歳 旅立ち』        金田浩一呂

 座談会

横浜港大さん橋 (3)


金田  六月には北洋・アラスカクルーズでクリスタルハーモニーが、また入港する予定です。

編集部 横浜は、市街地と港がすごく近いという一体感がありますね。

金田
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大さん橋周辺
「横浜インナーハーバー・マップ」から
横浜市港湾局提供
東京港の晴海ふ頭は竹山実さんが設計されたんです。水辺と建物が見えたり、建物の横に広い池があって、それを見ると、池と水面が一緒ですばらしい。でも、晴海ふ頭は都心からちょっと遠いんです。ですから、竹山さんもちょっと残念だったと思います。竹芝桟橋あたりにあるよかったんでしょうけど。 東京と横浜の違いはそこなんです。

しかも、今度、みなとみらい21線が、みなとみらいに入ってきます。営団線も乗り入れているので東京から地下鉄で、大さん橋のすぐ近くまで来られる。これは、なかなか珍しいことですね。

編集部 みなとみらい21線ができるのは平成十五年度です。駅名はまだ決まっていないようですが、元町まで延伸されますので、山手や中華街に行くのも便利になります。


クルージング−いつも海と港にふれながらの旅

編集部 クルーズというのは楽しいものでしょうね。

上田
ロサンゼルス港の客船ターミナルと「レディアンスオブザシーズ」
ロサンゼルス港の客船ターミナルと
「レディアンスオブザシーズ」
上田寿美子さん撮影
船上のプール
船上のプール
世界最大の客船「ボイジャーオブザシーズ」
上田寿美子さん撮影
クルーズというのは日本では娯楽周遊型の船旅と訳されていると思います。

客船は、例えばタイタニックとかいろいろありましたが、大西洋横断などは旅客機が出てきたので、船での移動が下火になってしまった。

それで、そのときに余った船をどうしようかという理由もあって、一九五○年代後半から六○年代ぐらいに今のタイプの、いわゆる近代型のクルーズが出てきた。もちろん本当のクルーズのルーツはもっと古いんですが。

それは船を交通機関としてとらえるだけでなく、移動をしながら、道中で食べたり飲んだり、遊んだりしながら進んでいくという、ある意味では合理的な旅です。今のクルーズのシステムは、乗船料金にすべて入っているので、一回乗ったら、一々お財布をあけることはない。飲み物は有料の船が多いんですが、食事はコーヒータイムから夜食まで七、八回出ますし、それから船内でもイベントがたくさんあります。ダンス教室、絵画教室、次の港についてのレクチャーであるとか。

海を見ながら、のんびりもできるし、忙しくも過ごせる。とてもお客様の自由がきく旅なんです。ご年配の方や、お子様連れにもまた楽で便利な旅です。

やはりクルーズの大きな魅力は、海と港にいつも触れながら進んでいける旅ということかなと思います。

確かに、服装のちょっとした示唆があったりしますが、仕事用のスーツとネクタイ、ちょっとしたよそ行きのワンピースで世界中のどの船でも事足りるので、お気軽に楽しめる旅です。

 

  個室にはベランダがつき、動くオーシャンリゾート

アーバンリゾートと自然のリゾートと一緒になったようなものでしょうね。

上田 そうですね。ですから、最近の客船は個室にベランダつきがふえていて、動くオーシャンリゾート、動くオーシャンビューという表現もよくされるようです。ご自分の部屋でルームサービスをとりながら、ベランダで海を見ながら進んでいくような。

金田 ある程度の船になると、それは動くマンションみたいなもので、横浜にも時々入って来ますが、服の数がすごかったですね。

上田 いくら着飾ってもいいし、したくなければ、それなりでいいんです。おしゃれが好きでお乗りの方、食べるのが楽しみでお乗りの方もいらっしゃいます。

金田 同じ期間、ホテルに泊まるのと比べて決して高くはないですね。

上田 そうですね。ショーやレクチャーも込みですし。いろんなカルチャークラスに出たつもりになれば。

 

  海から正面に町を見据えて訪問

編集部 船に乗っている方が港に着いたときの印象などはどうなんでしょうか。

上田 客船に乗っていますと、皆さん港に入る日は楽しみにして、到着の時刻より随分前からデッキに出られて、徐々に海から近づいていく景観を楽しまれています。例えば、ニューヨークに入るとき には自由の女神を見て、摩天楼を正面に見据えたり、地中海ですと、寺院の鐘楼の鐘が夕暮れの町に響くのを聞きながら、港に入っていくとか。

いわゆる飛行機の旅とは違う海からの、正面に町を見据えての訪問は皆さん船旅を選ばれる大きな理由の一つですね。そしてまた港、港で、いろんな親善のミス何々が出てきて歓迎してくださったり、地元のローカルなショーを見せてくださったり。

それと関係するのが港湾局が作成した地図ですね。横浜港は北向きだと言いましたが、普通は地図は北を上にしますから海が上の地図が多いんです。ところが港湾局の地図は海を下にしてある。昔の絵図などはこれが普通だったんですが、それがしばらくなくて、久々に見ました。 これも大さん橋ができ、山下公園が整備されたことの一つの表れかなと思いました。


横浜駅と関内の2つの地区を結びつける町づくり

編集部 山下公園にあった高架の貨物線が撤去されて港がよくに見えるようになりましたし赤レンガ倉庫も商業施設としてオープンしましたね。

金田 みなとみらい21中央地区と、新港ふ頭はかなりキャラクターが違います。みなとみらい中央地区は土地利用を百八十度変え、昔の記憶が残っている所は横浜造船所の一号ドック、 二号ドックだけです。

一方、新港ふ頭のほうは、もともと歴史があるし、なるべく既存の施設を有効に生かすことにした。建物をできるだけ低層にして、オープンスペースを広くとるという考え方ですから、赤レンガ倉庫の周辺は相当広々としていますね。

赤レンガ倉庫は二棟あります。水辺の近くで、あれだけのスケール感が残っていて二棟あるのは、非常に引き締まった広場ができますね。何もない広場はすごく難しいんです。広場はある程度開けている部分と、囲まれている部分と両方が必要で、あのスケール感についてはいろいろ議論はありますが、少なくとも二つの赤レンガ倉庫があって、その間にちょっとL字型に広場がある。だから、広場の空間構成としては非常に面白いといえると思います。

 

  横浜の都心臨海部の三分の二は再整備が完成

金田 それから、象の鼻地区はまだ再整備にかかっていませんが、赤レンガ倉庫がプロムナードで、山下公園へとつながってきましたから、ようやく、みなとみらいと山下公園が一体化されてきたということで、とりあえず、横浜の都心臨海部の再整備は三分の二ぐらいは完成したと思います。

横浜駅に近い高島ヤード側は山内ふ頭とまだ接続していませんが、とりあえず、関内地区とは、一つ目は、新港ふ頭の国際橋から横浜税関脇を通り大さん橋の後へ、二つ目は、栄本町線が旧横浜銀行跡地で再開発をしている北仲通で接続されますので、みなとみらい事業の横浜駅地区と関内地区を結ぶという所期の目的は達成したと思います。

編集部 それは飛鳥田一雄市長の頃からの計画ですね。

金田 みなとみらいは、今は観光と国際会議や見本市などコンベンションの場になっていますが、明治以来、あそこに横浜造船所があって、その工場地帯の土地利用を転換して、二つの地区をつなげようということが出発点ですから、やっとみなとみらいの当初の目的が達成できてきたので、関内、山下公園のほうもこれで大分元気になるんじゃないかと思っています。

 

  テレビや映画の舞台になった昔ながらの港の情景が減る

今言われた、横浜駅から関内地区をつなげることはいいと思うんです。その先の山下ふ頭や新山下辺りがどうなっていくのか。そういうつなぎから言うと、港の二面性みたいなのがある。映画の舞台になるような空間と、整備する側から言うと、なかなかしにくいような面があって、いろいろな見方がある。そんな両方の面倒までは見られないというところが正直なところだと思いますが。

金田 新山下の旧貯木場のところですね。そこと赤レンガ倉庫がテレビの露出度では昔は一番多かった。「太陽にほえろ!」や「西部警察」によく出てきた。そういう昔ながらの港の情景がだんだん少なくなってきます。

昔の裕次郎の映画とか、日活の昭和三十年代の映画にはしょっちゅう出てきましたね(笑)。そういう所がなくなりますね。

編集部 赤レンガ倉庫は関東大震災前の建築として、横浜の貴重な文化財ですね。

赤レンガ倉庫
赤レンガ倉庫
横浜市港湾局提供
赤レンガ倉庫は、私が最初に入ったころは、半分は使われてなくてハトの巣みたいになっていた。真ん中の広場にはまだ鉄道の線路が残っていて貨物列車が止まっていたり、映画のシーンに出てくるような世界でしたね。

みなとみらいのドックヤードガーデンなども、今、見ている人は昔の造船所時代のことを知っている人は少ないと思うんです。あれなどは、もう少し港の殺風景さみたいなものを残しながらできなかったかなと。それにはいろいろな仕掛けが要るんだろうと思いますが、せっかく汽車道と呼ばれているものとつながっていた所が、ちょっと途切れるような形になっているので、そんなことを思ったりします。

金田 デザインの思想ですよね。それとスケール感。

堀さんが言われたような再開発の仕方は、ボストンのインナーハーバーの再開発で行われていますね。一○○%きれいにしないで、古い倉庫を住宅に直したりしている。スケール感もそういうことがいえますね。

日本人には、やはりきちょうめんさがあって、公園でも何もない公園というのはなくて、ちょっとでも何かつくってしまう。新しい大さん橋のターミナルの広場が日本離れした空間になっているということなので、期待しているんです。

 

  アジアの港に対して国際競争力をどうつけるかが課題

編集部 今、横浜港の取扱い量日本一なんですか。

金田 商港としては日本一だと自負しています。コンテナが二番です。それ以外にプラント類や自動車の輸出も相当あります。

しかし、今は横浜は日本の港とではなく、アジアの港、釜山、高雄、上海あたりとの競争ですから、激烈です。特に釜山とは熾烈です。

現在の日本の港湾政策は百八十度変わるということで、空港もそうですが、工業製品と同じように、三次産業である港とか空港は、国際競争力をどうつけるかということになってきましたし、それが日本全体の大きな課題です。

 

  七月二十日の花火大会では屋上広場は特等席

編集部 横浜港へ望むことは、何かございますか。

上田 港湾局のパンフレットに、客船が主役になる港と書いてありましたし、まさにそうだなと思うんです。

私は、いわゆるクルーズライターですから、写真も撮ります。海外、国内のいろんな港でも、船をはっきりよく写せる港は少ないんです。遮蔽物があったり、対岸の駐車場まで行かなければいけないとか、四苦八苦して船の全景の写真を撮ってくるんです。そういった意味で、横浜港は山下公園をバックに写真を撮っても、きっと絵になる港になると思うので、いつかまた撮りたいなと、ワクワクしながら見ていたんです。

金田 当初計画では、ターミナルの先端にもっと高い建築物があったのですが、ターミナルはもともと船が主人公なので考え方を変え、高さを相当抑えてあります。

上田 機能性もCIQ(税関・出入国審査・検疫)が二時間で千人が可能とか。乗客の利便性にも期待しているんです。

金田 屋上広場と内部の造形空間は、横はガラスなのでスッと見えるから、なかなかの眺望だと思います。

上田 屋上の広場もすごい発想ですね。

金田 七月二十日の花火大会のときは山下公園辺りに台船を着けて花火を打ち上げるので、屋上広場は特等席ですよ。ただ、安全確保のため入場人数の制限をしないと。物理的な 面積ではなくて、出入りするときの動線の問題がありますから、今後、警察等と相談していきますが、人数をどれぐらいにしようかと思っています。

新港ふ頭の方向で見ると、みなとみらいのスカイラインもすごくいい。屋上はお勧めのデートコースですよ。

編集部 どうもありがとうございました。




 
かねだ たかゆき
一九四六年京都府生れ。
共著『分権社会と都市計画』ぎょうせい3,150円(5%税込)、他。
 
ほり たけよし
一九四九年東京生まれ。
共著『彩色アルバム明治の日本』有隣堂9,240円(5%税込)、他。
 
うえだ すみこ
一九五三年東京生まれ。
著書『世界のロマンチッククルーズ』弘済出版社1,100円(5%税込)、他。
 




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