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新町: |
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このあたりでやめておきますか(笑)。 私も「乃里子三部作」でも他の小説でもたんまりありますが、キリがなくなってしまう! では追加であと一つ。
『おかあさん疲れたよ』より、
「感嘆符が付かな、あかんねんわ。 あたし、『運がよかった!』と思ってるわ、あたしの人生——」 |
「さっきは、あたしが『人生は短い』という結論を出して、浅尾サンが、『他人(ひと)は偉い』という発見を結論にしたけど——何ンか、もっとありそうな気がして、探してたら、やっと思いついたの。 つまり、『運がよかった!』という究極のフレーズ」というセリフに続く一言です。 この作品のあぐりは30代後半という女ざかりに戦後をすごし、生涯独身で家族を支えて生きてきました。 それでも「運がよかった!」と思えるということ、これはどんな方にでも人生に灯りを点すすべての一言ではないかと。
先日、この作品をお読みになった中村江里子さんとお話する機会があったのですけれど、江里子さんもこのあぐりの生き方にはまって号泣したと話していました。 思い出しながら話すだけでお互い目に涙が浮かんできてしまいました。
でも、きっとそれぞれに「ビビビとくる一言」がたくさん見つかるのが田辺さんの作品なのだと思うのです。 解説を拝読していても、作家の方々が「しびれた」一言が引用されていたりしますよね。 もちろん「そうそう!」なんて大賛成して読みつつも、「あ、でも私これもいいなァ……」なんてこっそりほくそ笑む、それも田辺作品ならではの楽しみ方かもしれません。 付箋や鉛筆が必需品ですよ(笑)。
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加藤: |
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たくさんの名言をご紹介していただきありがとうございました!
これから田辺作品を読み始めよう、と思う方たちにはどの作品からお勧めになりますか?
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新町: |
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まず絶対的に「乃里子三部作」はおススメです。 長編ですが、ある30代の超大物女優の方が「私普段小説読まないのに、台本読まなきゃいけないときにもかかわらずページをめくる手が止まらなくなっちゃった」とおっしゃったほど、「乃里子」を中心にした恋愛小説は胸を射抜かれます。 男の方には『春情蛸の足』は絶対にいいと思いますよ。 うちの夫は恋愛小説が基本的に苦手なのですが、これは持ち歩いて、この通りにご飯作って、なんて言ったりもします(笑)。 これは短編集なのでもちろん女性でもおススメです。 基本的に健気な男たちの食と恋の短編集なのですけれど、小川糸さんが「この作品を読んで男性のことがちょっとわかりました!」っておっしゃっていましたから。 『愛の幻滅』には「組み合わせ一つでええ女になったり、わるい男になったりする。 ええ組み合わせは一生に、そう何べんもできるもんやあらへん。 」とか、「恋のホンモノを手に入れたあと、もう気の抜けたニセモノの恋では満足できない」とか、恋愛に関する「私の一言!」が必ずみつかる作品でもあります。 ただ、上下巻なので……。
私が初心者としてがっつりはまったのは、すみれとワタルの恋愛小説、『愛してよろしいですか?』『風をください』のシリーズ。 集英社文庫です。 読み終わって「ああ、こんな温かい作品を読めてよかった」と涙が止まりませんでした。 有名な角川文庫の『ジョゼと虎と魚たち』も大好きですが、私は長編を読んでから読んだほうが、より“はまる”ように思います。
エッセイでしたら、角川文庫の『残花亭日暦』を是非。 これはご主人の「カモカのおっちゃん」がなくなったあたりのエッセイを集めたものなのですが、田辺さんの生き方がすっと入ってくる名作です。
集英社の村田さんからは下記のメールをいただきました。
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